ロード・オブ・ザ・リング―1200年の時を超えて
2006年08月28日
昔、映画『トロイ』に描かれた世界はすべてフィクションだと思われていました。ところが「それはきっと実在するはずだ」と信じて独力で遺跡を掘り当てた人がいました。『夢を掘り当てた人』という小説に描かれているシュリーマンがその人です。
イギリスでもこれと似たことがありました。7,8世紀頃に創られ、12世紀になって写本に書き記された『ベオウルフ』(Beowulf)というイギリス最古の物語の世界は、長いこと単なるフィクションだと思われていました。ところがその中の世界が実在した証拠となる遺跡が見つかったのです。 遺跡の発掘とちょうど同じ頃、『ベオウルフ』を「これはとても優れた文学だ」と初めて評価した人がいました。それまで『ベオウルフ』は「しょっちゅう話が脱線する、下らない怪物退治の話」と馬鹿にされていたのです。その人の名はトールキン、『ロード・オブ・ザ・リング』の作者です。
トールキンは『ベオウルフ』の持つ優れた要素や色々な神話の要素を取り入れて『ロード・オブ・ザ・リング』の世界を創り上げたのでした。
この作品は一昔前、ベトナム戦争当時のアメリカで大流行しました。その時指輪は核兵器にたとえられ、また平和を求める若者達は「ガンダルフを大統領に!」と叫んだそうです。 強大な力があるからこそ捨てられなければならないもの――『ハリー・ポッターと賢者の石』の中の「賢者の石」にも似ていますね。さて皆さんの人生の中の「大きな力があるからこそ捨てなければならないもの」とは一体何なのでしょう?
写真
上・Beowulf CD (古英語の神秘的な響き!) のジャケット
中・The Fellowship of the Ring (The First Part of The Lord of the Rings)
下・『ロード・オブ・ザ・リング第三部・王の帰還』DVD
人文学部英語コミュニケーション学科教授 榎本眞理子
専門: イギリス文学
担当科目: 「イギリス文化研究演習」、「イギリス文学史」、卒論指導等
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