2007年8月
夏を歩こう その4
2007年08月27日
猛暑の夏と円朝夏は暑いと相場が決まっていても、スーパー猛暑日の続く毎日です。残暑お見舞い申し上げます。
夏といえば柳に怪談。そして怪談とくれば三遊亭円朝。その円朝が飛びきり面白いこの夏です。
幕末から明治にかけて活躍したこの名人は、自ら書き、高座にたった噺家(はなしか)でした。あの有名な『牡丹灯籠』を書き上げたのが22歳の時。幽霊のお露と逢瀬を重ねていた新三郎、この二人の出会いのきっかけが、いま亀戸の天神様の近くにある臥竜梅跡に辿られますよ。この夏封切られた映画『怪談』はもうご覧になられましたか?この映画は『牡丹』より2年ほど早くに彼がまとめた『累ヶ淵後日怪談』の改作『真景累ヶ淵』(1888年/岩波文庫で読めます)が原作です。
いよいよ、そんな円朝ってどんな人?という思いがわいてきたら、六本木の国立新美術館へ。いま「日展100年展」で、鏑木清方の描いた貴重な肖像画を見ることができます。
加えて、この夏は本家の落語界でも老若の名人が円朝作品に挑戦。円朝ファンには本当に豪華な年です。
ところで、彼の作品を貫くのは不思議な「縁(えん)」。今どき、そんなの科学的じゃないと一蹴もできます。でも、この辺りに関心を覚えられたら、もうあなたはインド哲学の茂みにも分け入っているのです。
写真上:中之島公園の柳/大阪・淀屋橋
写真下:わが家の初咲きシュウカイドウ
人文学部 文化学科 杉山圭以子
担当科目: 比較文化論、文化史研究など。専門はインド史。
夏を歩こう その3
2007年08月20日
夏らしいということ各地で、40℃を越える、観測史上初の記録的な猛暑が続いています。
さて、皆さんは「夏を歩く」というタイトルから、どのような映像イメージを持たれるでしょうか。青い海と白い砂、入道雲の映像などが想起された方は、アウトドア派の方でしょう。それとも、朝まだき、濃い霧が木々の間を滑らかに縫っている避暑地の映像でしょうか。おっと、受験生の皆さんは、「夏は夜」という枕草子の一節を想起して、蛍の飛び交う光跡の映像でしょう。
さて、重い腰を上げて、記録的猛暑の中、小学校以来の暴挙を犯すことにしましょう。
8/17、40.8℃の記録的真夏日。近くのひまわり畑に向かうことにします。

ちょっと、平凡な映像ですね。接写だとどうでしょう。

うーむ、単体のひまわりは、イメージ的に「らしさ」が表現されません。人を入れて写してみましょう。

ちょっとはアートっぽくなったでしょうか。だんだん、熱中してきましたし(笑)。
ところで写真の人物は、男性でしょうか?女性でしょうか?
遠くてわからない?いえいえ、パラソルには、男性用がありません。もちろん、女性です。
単に、「夏を歩く」という外界の事象を切り取ったようにみえる写真も、実は、頭の中の「夏らしさ」という想念と照らし合わせながら、事象を選択的に選びとっています。
被災地などを報道する写真は、それが、事実ではありながら、圧倒的に女性と子供が多いことが知られています。事実かどうかより、報道する側の意識のフィルターが問題となります。
一生に一度の受験生の夏。皆さんは、どんな「夏らしさ」を経験されるでしょうか。
人文学部 日本語日本文化学科 川井章弘
担当科目:日本語表現 I (音声) 日本語研究 III(日本語教育)他
夏を歩こう その2
2007年08月10日
鮎の友釣り山間に流れる川の中で、釣りをしている人を見かけることがあると思います。
川の中まで入って、長い竿を操っている人は、鮎を釣っている人です。
皆さんは、「鮎の友釣り」を知っていますか?
6月頃になると鮎は川の中で「なわばり」を持つようになります。この「なわばり」に他の鮎がくると背ビレを立てて攻撃して追い払う習性があります。この習性を利用して釣る方法が「友釣り」です。
したがって、友釣りは「えさ釣り」ではありません。「えさ」の変わりに「オトリ鮎」を使って竿先で操り、「なわばり」圏に侵入させ攻撃をしかけ、かけばりに掛かるのを待ちます。体当たりに近い攻撃力は、掛かるとガツーンと手応えともにぐいぐい引かれます。これが友釣りの醍醐味で、私はかれこれ12年、この釣りにハマっています。実はこの友釣り、江戸時代から始まった世界に類を見ない日本独特の釣法で、日本の伝統文化なのです。
釣りをしないまでも、緑に囲まれた美しい清流の川原を歩いてみてください。
川のせせらぎや鳥のさえずり、虫の音を聞きながらのんびりと歩くと、日頃の疲れが吹っ飛びます。歩いた後、どこかのお店に入って、鮎の塩焼きをお召し上がりください。
香魚の名前を持つ鮎は、他の魚にはない独特の香りと味わいが楽しめる夏だけの味覚。
がぶりと豪快にかみついて、鮎ならではの美味しさを堪能してください。
宇田川 篤(入試広報室長)
13日から15日までネットワーク停止につき、8月10日にアップしました。
夏を歩こう その1
2007年08月06日
学生とブルックリンを歩いた夏昨年の9月4日のレイバー・デイの午前。季節外れの嵐は止んでいた。
私たちはマンハッタンの摩天楼を背にしながら、ブルックリン・ブリッジの木製の歩道を歩いている。
微風が心地よい。午後にブルックリン・ハイツで地下鉄に乗り、イースタン・パークウェイに向かった。
そこで重低音の心臓の鼓動のようなリズムの爆音を全身に浴びた。ハイチ人を満載した大型トラックの山車の上からラップ・ミュージックか何かのシャウトがスコールのように降り注ぐ。訛りのあるフランス語の混じった言葉のようだ。ラテンのリズムが聞こえてくる。
カリブ系の黒人たちは原色のコスチュームを身にまとい、陶酔したかのように踊っている。バルバドス、ハイチ、ジャマイカといった鮮やかな色の国旗を手にした人々とすれ違う。自らの出自と文化を誇る黒い祝祭空間。
ここには場違いな黄色い肌に強い日差しが照りつけている。
学生たちは上半身を時に露にした黒人たちの海を縫うように進んでいった。肌にはじっとりとした汗がにじみ、強い香水と交じり合った体臭や肉汁の焦げた煙が鼻腔に押し入ってくる。
彼女たちははしゃいだり、リズムに合わせて身体を揺らしたりしていたが、段々無口になっていった。今年のニューヨークで学生たちはどんな夏を歩くのだろうか。
写真上:ブルックリン・ブリッジ
写真中:ハイチ人を満載した大型トラックの山車
写真下:ブルックリン・ハイツからマンハッタンの摩天楼を望む
人間社会学部 国際社会学科 漆畑智靖
担当科目:短期フィールドスタディ(アメリカ合衆国)、国際政治学など