2007年10月
私の書棚 その5
2007年10月29日
「もしも今、東京を大地震が襲ったら」
もしも今、東京を大地震が襲ったら...
雪崩のように落ちてきた本の下で生き埋めになった私を、翌朝誰かが見つけることになるのだろうと、自室の机をぐるりと取り囲む本棚の列を見て考えてしまいます。
研究者という生きものは、多かれ少なかれ似たような部屋に住んでいます。壁を埋め尽くす本、本、本...しかし、それでも足りません。個人が一人で集めることのできる本の量など、たかが知れているのです。そのため、私たち教員にとって「本棚」とは、実は図書館のことなのです。
今は、恵泉大図書館や都立多摩図書館が私の"日本での"本棚です。
その前は、留学先のボローニャの図書館が私の本棚でした。ヨーロッパ最古の歴史を誇る大学ならではの、由緒ある古めかしい建物の中にその図書館はありました(図1)。大きな閲覧室で本を読みながら、眼が疲れてふと顔を上げると、四方の壁を飾る色とりどりのフレスコ画が目に映ります。数百年前に描かれたその壁画をしばしボーっと眺めてから、再び視線を落として本に戻るのです。
また世界中の美術史研究者にとって、フィレンツェの美術史研究所図書館は一種の「聖地」となっています(図2)。西洋美術史の膨大な文献があらかた揃う、私の永遠の"海外での"本棚です。
皆さんも、これぞ「私の本棚」と言えるような、お気に入りの図書館をぜひ見つけてください。
文化学科 准教授 池上英洋
担当科目;文化学基礎研究IV他
私の書棚 その4
2007年10月22日
「English Podcasting」This is a book I am very happy to have on my bookshelf.
If you have an MP3 player or an iPod, the most enjoyable way to learn English is through music and podcasting.
You can find daily English lessons for free if you subscribe to a podcast.
For example, manythings.org has some good daily exercises.
Then you can study simply by listening while you take the train or wherever you are during the day.
Now that’s a fun way to learn English!
英語コミュニケーション学科 特任講師 Mark Firth
担当科目;コミュニケーション実践IV他
私の書棚 その3
2007年10月15日
「読書と記憶」
この文章を書くために、どういう本を読んできたか思い出していました。
小学校の高学年の頃は、吉川英治のファンでした。中学生の頃は、新田次郎や北杜夫。作家を思い出すことで、その頃の自分が甦ります。
読書の原体験として強烈な印象があるのは、小学校2年生のときに読んだ、古田足日の『モグラ原っぱのなかまたち』です。
小学生の4人組は、ある日探検をしていて原っぱを見つけます。そこは子どもたちの聖地となり、様々な遊びや事件が繰り広げられる。しかし、最後に団地の造成のために原っぱが失われてしまいます。子どもたちは、座り込んで必死に抵抗しますが、当然ながら敗れます。
小学校2年生の私は、子どもたちの抵抗は絶対に正しいと思いました。
この作品が書かれたのは、高度経済成長に伴って、乱開発が行われた時代です。私は子どもながらに、私たちにとってかけがえのない世界が、「発展」や「豊かさ」のために失われていく時代の流れを感じていたのだと思います。
でも、たとえ現実の「モグラ原っぱ」が失われても、誰も子どもたちの心から、記憶まで奪うことはできません。
私は、失われた世界の美しさを記憶し続けるために、本を読み続けているのかもしれません。
日本語日本文化学科 准教授 佐谷 眞木人
担当科目;日本文学史I、日本文学研究I(古典文学)他
私の書棚 その2
2007年10月08日
「さまざまな分野の本たち」自由に空を飛ぶ竜の世界、その竜と心を通わせる人々の物語。心躍らせる『パーンの竜騎士』シリーズが本棚に並んでいます。
気分を変えて『本ができるまで』印刷の歴史から製本までわかりやすく書かれています。文庫や新書は持ち運びに便利なのでよく読みます。
厳しい父親のもとで羊飼いをしていたためほとんど教育を受けていなかったが、20歳から苦学し言語学者になった著者の権威的家父長の父親との葛藤、向学心に感動した『父パードレパドローネ』『町工場・スーパーなものづくり』 超精密機械を操る手技(てわざ)や神社の鈴と宇宙衛星は同じ伝統的な技術が使われているなど、現在の最先端技術を支える町工場。私たちが便利な生活を享受できるのは連綿と続いている町工場の技術によるということが良くわかる本です。
ときには『The Moment 自然の瞬間』など写真集のページをパラパラめくるのも、気分が変わっていいものです。
年齢によって関心のあるテーマが変わりますし、部屋の広さも限度があります。実は私の本棚はあらゆる分野の本が揃っている図書館にあります。
大学図書館、公共図書館、専門図書館など性格の違いがありますが、私は主に公共図書館を利用しています。
学生の皆さんには色々な図書館を使いこなしてほしいと願っています。
『パーンの竜騎士シリーズ』 アン・マキャフリイ著 早川書房 1982~
『本ができるまで』 岩波書店編集部編 <岩波ジュニア新書> 2003
『父パードレパドローネ』 ガヴィーノ・レッダ著 朝日新聞社 1995
『工場・スーパーなものづくり』 小関智弘著 筑摩書房 1998
『The moment : 自然の瞬間』 栗林慧著 日経サイエンス社 1991
入試広報室 高橋あや子
私の書棚 その1
2007年10月01日
私にとっての『書棚』
私は大学生の頃、神田の古本屋街を歩くのが好きでした。子どもの頃、深夜になると書物の中の登場人物が『くるみ割り人形』のように動き回るのじゃないかと想像して夜中に書棚の裏を覗いたりしたほど本を楽しんでいた私にとって、それは至福の時でした。
そこでほしい本を手にしたり、新たな本と出合ったり。ある時とても素敵な全集と出合ったのですが、私の手元には置くことができませんでした。
そんな時を経て今、かなりの書物が私の本棚に収められていてどれも貴重で大切です。
しかし今の私を作ってきた多くの書物、それが収まっているものがそれとは別にあって、それが書棚という気がします。自分自身の内的世界が作られて来たものの象徴...私は書棚をそう捉えています。人には必ずこのように、今ある自分を背後から支えている、自分を紡いできた何かがあると思います。言葉によって人の生き様を紡いでゆく世界の『居場所』として書棚があるのではないでしょうか?
そんな私の多くのお気に入りの書物の代表は、「赤いろうそくと人魚」「モンテ・クリスト伯」「ゲド戦記」など。
そして大学生の時に手に入れられなかった全集は小川未明(「赤いろうそくと人魚」の作者)全集!大学生にはあまりに高価だったのです。これぞ外的世界の現実!
人間環境学科 齋藤謁
担当科目:人間形成基礎演習他