恵泉女学園大学

梅雨 その2

2008年06月09日

「傘、この永遠なる道具」

うちのゼミに自称「超おばあちゃん子」がいる。先日、どんな話をするのか聞いてみると「『フキ、食べな』とか言うんです」とのこと。ほとんど即答。きっと板ずりなどしてアクを抜き、丁寧に調理されたフキだったにちがいない。即答の妙に、旬の味でむすばれた二人の確かな絆を感じた。

ところで、フキは日本の原産。北から南まで自生している。庭先で育つ程度のおとなしいものから、北斎が漫画に描いた人の背丈ほどもある秋田フキまで種類は多い。おもしろいなと思うのは、その姿。基本は葉(笠)と茎(柄)という「パーツ仕立て」で、そのまま延長すれば傘となる!今どきは、軽量傘に500円ビニール傘、ワンタッチ傘や楽しいファッション傘といろいろあるが、傘もフキ同様、至極かたちは基本に忠実だ。

しかも「ここ一番」、どれもその基本で勝負するところがいい。子供の頃よく食べ、親しく遊んだ巨大な秋田フキの「雨傘」。玩具としての破格のサイズに、夢もついでにみせてもらった。

いよいよ梅雨本番。フキとも傘とも無縁な猫たちが、かわいい肉球をまわしながら顔を熱心に洗う季節でもある。この顔洗い、梅雨の湿気でヒゲがべたつくから、らしい。長雨は憂鬱だが、お気に入りの傘を眺めながら、猫の不思議といっしょに、永遠のかたちを楽しむ余裕なども忘れたくはないものだ。

写真上:ようこそ、マイ傘パビリオンへ
写真下:わが家のシャリンバイ、もうすぐ出番を紫陽花に渡します。

文化学科 准教授 杉山圭以子
担当科目:比較文化論、文化史研究など。専門はインド史