私のお気に入りの映画 その1
2009年03月02日
「アマデウス」米・アカデミー外国語賞に「つみきのいえ」、「おくりびと」決定の報が入る。快挙である。殊に、「おくりびと」は、文化によって、全く異なる葬送儀礼を扱っている点で大変興味深い。個別的な日本の葬送を具象的に描くことで、逆に人間の死・家族愛といった普遍性を獲得したことが、今回のアカデミー賞につながったのだと思う。
これと似た経験は、我が映画人生にも該てはまる。映画のマイベストチョイスは、「アマデウス」('84年、アカデミー賞8部門受賞)である。
......とある収監施設。すでに昔日の宮廷音楽家の面影なき老人「サリエリ」。一人の若き神父がそこに訪れるシーンから映画の幕が開く。
独身を守り、音楽に人生の全てを捧げる若きサリエリ。比類なき楽才を有するが、享楽的な人生を歩むモーツアルト。サリエリの口から、夭折の天才モーツアルトの死の理由が、語られ始める。「神の声」とも表現される楽曲の完成度、譜面に起こした時点が「完成譜」というモーツアルトの才能。宮廷音楽家としての自分の評価を脅かしかねないモーツアルトの存在。残酷なまでの才能の彼我の差。世俗的評価と、嫉妬。信仰のゆらぎ。
荘厳なレクイエムをバックに物語は、欲求5段階説(注1)をなぞるように、人間の存在にかかわるきわめて普遍的なテーマを奏でていく。
この映画、サリエリが神の声を聴く、口述筆記の場面は圧巻。雰囲気をちょっと味わいたい方は、レクイエム ニ短調 K.626の7番と8番のサンプルをお聞きいただきたい。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/883307
本学では、オルガニストの関本先生から、直接、「チャペルでひくパイプオルガン」の指導を受けることができますよ。
http://www.keisen.ac.jp/univ/session/c3.htm
注1 マズロー欲求5段階説 ......こちらは、ウィキペディアをひいてみてください。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E7%90%86%E8%AB%96
日本語日本文化学科 准教授 川井章弘
担当科目:担当科目:日本語研究III(日本語教育)他
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