恵泉女学園大学

2009年3月23日

私のお気に入りの映画 その4

2009年03月23日

「もう一つの『おめでとう』、 2009年米アカデミー賞!」

まだ風は冷たいですが、春の木々の花芽が確かに芽吹いてきました。さて、深刻な世界同時不況に迷走するこの国の政治、と身近には盛り上がるものがないこの頃、日本列島を米アカデミー賞の大きなニュースが駆け抜けました。邦画二作品のW受賞という快挙に、勇気づけられた人たちは少なくはないでしょう。

無理もありません。アメリカ映画芸術科学アカデミーの折り紙付きとなったのですから。ところで、今年はもう一つ、これらの二作品とならんで破格の受賞作品がありました。「スラムドッグ$ミリオネア」です。この一作品に作品賞、監督賞、主題歌賞、作曲賞、録音賞、脚色賞、編集賞、撮影賞、計八冠の折り紙がつきました。

原作は現役のインド人外交官が書いたQandA(2005年)。スラムで人生がはじまった少年が、そのおいたちのなかで獲得したものを武器に、結果的にはクイズ番組を勝ち上がっていくお話です。この原作の世界がなかなかに面白く、ゼミで取り上げたのが2年前。オスカーの折り紙がついたあとでは、皆が作品に殺到しますが、世の中が静かな時に、このキャンパスにこの世界を届けられたことをうれしく思います。

スラムといえば、条件反射のように「悲惨」や「格差」の話になりがちです。それは外から「ながめる」まなざしがつくるもの。そこにも生きる側からの発想があることを原作は気付かせます。映画は見事な国際合作で、しかも全編の3分の1はヒンディー語(恵泉で学べます)での仕上がりのよう。日本での一般劇場公開はこの4月からです。

※写真:わが家に咲いた春の力づよい花芽群です。

文化学科 准教授 杉山圭以子
担当科目:比較文化論、文化史研究など。専門はインド史