2009年8月31日
私が最近気になること その1
2009年08月31日
「オバマ大統領はアメリカ人か?」Birther Movementを知っているだろうか。「オバマはアメリカ生まれ(birth)ではなく、アメリカ市民ではない。大統領の資格を剥奪するべきだ」という荒唐無稽な主張を掲げる狂信的な運動である。CNNやFOX Newsの右派トークショー・ホスト、共和党の議員の一部(オバマは民主党)がこの主張に追随し、主流派を巻き込む論争となった。驚くべきことに、共和党支持者と南部(かつての奴隷州)居住者の過半数が、「オバマはアメリカ生まれではない、あるいは彼の出生に確信がもてない」と回答している(「リサーチ2000」による今年7月末の調査)。また現在、白人優越主義者による暴力活動を懸念する報告もある。
実は、このほかにも、「オバマは愛国心に欠け、テロリストと関係があり、共産主義者で、黒人優越主義者、隠れイスラム教徒、さらには聖書に預言されたアンチ・キリストだ」という非難・中傷も彼に向けられてきた。共通点は、彼が、キリスト教徒・白人を「主流派」とする「アメリカなるもの」からの逸脱者、つまりは「非国民」に違いないという点だけである。ケニア出身の黒人ムスリムを父とし、カンザス出身の白人の世俗的ヒューマニストを母とするオバマの大統領当選が、ますます多様化するアメリカの未来を象徴するとすれば、これに反発し、アメリカの過去に囚われたパラノイア的な人々がBirthersだといえよう。
国際社会学科 講師 漆畑智靖
担当科目:国際政治学、アメリカの政治・外交