恵泉女学園大学

2009年9月 7日

私が最近気になること その2

2009年09月07日

「『宮崎アニメ』ラピュタの滅びた理由」

ちょうど夏休みということもあって、この夏、宮崎アニメをいくつか鑑賞した。日本語を10分見たら、同じ分だけ外国語のものを見るという贅沢な見方である。

そこで外国語版でちょっと気になるところがあった。ラピュタがなぜ滅びたかである。
原作で、シータは言う。

今、ラピュタがなぜ滅びたのか、私、よくわかる。
ゴンドワの谷の歌にあるの。
土に根をおろし、風とともに生きよう。
種とともに冬を越え、鳥とともに春を歌おう。
どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんのかわいそうなロボットを操っても、「土」から離れては生きられないのよ。

である。
英訳ではどうなっているだろう。
No matter how many weapons you have,
no matter how great your technology might be,
the world cannot live without love.
いかなる武器、いかなる偉大な科学技術を所有しようが、世界は愛がなければ存立しないのよ。
とでもなろうか。

ここに作品世界を構成する世界観の差が現れている。
英語版では、ラピュタは、あくまで、人間界側の問題、ムスカの行った所業のように愛なき治世が滅ぼしたのである。しかし、原作はそうではない。
科学技術を駆使し、意志なきロボットたちを使役し、大地からラピュタ人が離れたこと。反自然思想がラピュタ王国を滅ぼしたのである。英語版にはない「かわいそうな」ロボットだというシータの発言はだからこそ発せられる。

ああ、古く、三蔵法師をしてインドへ向かわしめたワケがここにある(^^)。
ゴンドワの谷の歌と主題が齟齬(そご)をきたす英語版ラピュタ。このアニメを見て、不審に思った世界の学生が、ゴンドワの谷の歌の思想を体現する恵泉女学園大学に留学してきてくれることを期待している(^^)。

日本語日本文化学科 准教授 川井章弘
担当科目:日本語研究III(日本語教育)他