2009年9月21日
私が最近気になること その4
2009年09月21日
「中国の交通事情」しばらく前から中国を旅するようになった。これまで直行便のある都市とその周辺は行きやすいが、内陸部の多くは日本からのアクセスが悪く、旅行者が足を踏み入れるのは難しいかった。中国観光ツアーの多くが北京・上海・香港などに集中しているのも、そうした事情があったのだろう。ところが、ここ数年、状況が変わりつつある。高速鉄道の導入があったためである。一般には「動車組」と呼ばれ、時刻表などでは、列車番号の前に動車組「D」の記号を付けている。この高速鉄道、外見は紛れもなく新幹線である。初めて見たときには、何かしら感動のようなものを覚えた。ただし、向こうでは「ひかり」「はやて」ではなく、調和を意味する「和諧号」という名で通っている。
日本の新幹線が専用線を走るのに対して、中国では在来線を通る。両国では在来線の軌道の幅が違っているためである。中国の軌道はもともと広く、そのまま走らせることができる。だから、導入の速度は驚くほど早い。瞬く間に運行路線を拡大している。ただし、在来線を利用している宿命であろうか、速度の遅い列車との兼ね合いが難しいようで、最高速で突っ走るわけにはいかないようだ。時には100キロ程度まで落とし、時には200キロを越える。
最近、面白いことに気付いた。初めて乗ったときには日本の新幹線そのままだったと記憶しているが、路線によっては少しずつ独自仕様が登場しているようなのである。そのことを最初に発見したのは、トイレだった。トイレは食事と並んで、文化の違いが出やすいようである。現在の日本の新幹線には見られなくなった「和式」となっていた。次に「網棚」に気付いた。ずいぶんと頑丈そうに見える。宅配便が発達しておらず、マイカーも日本ほどには普及していないからであろうか、大きな荷物を持ち込む乗客が多い。重量級の荷物を載せたが、ビクともしなかった。
日本から中国へのアクセスが容易になったのであれば、当然のこととして、中国から日本へも来やすくなったはずである。最近、河南省や湖南省など内陸部の留学生をよく見かけるようになったが、これも交通事情の変化と関係しているのかもしれない。最近、そんなことが気になり始めている。
文化学科 准教授 高濱俊幸
担当科目:文化史基礎研究他