恵泉ディクショナリー

平城(なら)歴史文化学科

[なら] 

平城(なら)とは

平城遷都1300年にあたる2010年、奈良が熱い。そうか、<なら>か、と声に出してみる。その音<なら>で、かつて
<平城>という字を読んでいたというから、ややこしいけど面白い。もちろん、「かつて」とは平城京があった奈良時代のこと。<平城>には、もともと「土地をならす」という意味があったというが、それは都大路のインフラ整備だけをいうのではないだろう。

土を耕して生きる人たちは、大地の高低・凸凹をならし、播いたタネがどこからでも芽が出てくるその先を願う。そうして、やがて播かれたタネは地に着いて、ならした大地がかたまる。この奈良時代、そんな「タネ」の多くは大陸からやってきた。かの地の進んだ文物や仏教文化が、人の「移動」で伝え運ばれて、1300年もの時を越え、今にここにある。日本から大陸へ、大陸から日本へと命がけで海を渡った人たちがいる。遣唐使がそうだし、唐招提寺の鑑真和上もだ。それはまだインターネットもなかった時代の情報と文化の伝わり方だった。

身を危険にさらさずとも、あふれるほどの情報に包まれている現代人が今手にしているもの。この先、果して長く生き延びているのは何であろう。今年も「お水取り」が近い東大寺二月堂。752年からはじまり、以来、一度も途絶えたことがない修二会(しゅにえ)に思いをはせる。「本物」をもとめるならば、今年は奈良まほろばの旅に勝るものはないかもしれない。

2010年02月08日 筆者: 杉山圭以子  筆者プロフィール(教員紹介)

ナ行