恵泉ディクショナリー

働く女性日本語日本文化学科

[はたらくじょせい]  working woman

働く女性とは

働く女性が増えてきた。よくそう言われます。しかし、本当にそうでしょうか。

たとえば1960年代の日本は、そうと自覚されていなかったのですが、実は世界の先進国に比べ女性の有職率が極めて高い国でした。それは工業化により、既婚女性がいち早く専業主婦化していた欧米と比べて、農業が主要産業だった日本では、主婦も田畑で一緒に働いていたからです。

ところが、その後、欧米では労働に対する意識が変わり、女性の有職率が急速に高まります。一方、日本でも産業構造の転換が始まり、遅ればせながら農業以外の産業に従事する女性が増えますが、こちらは高校や大学卒業後に就職はしたものの、出産・結婚を契機に離職し、その後は専業主婦に留まる傾向がむしろ強まりました。日本政府も男女雇用機会均等法の施行などの施策を打ちますが、出産・育児期にあたる25~44歳の女性の就業率は09年でも66%に留まり、年齢全般に渡り80%前後の女性就業率を維持している国の多い欧米とはまだまだ開きがあります。

もちろん家事や育児も大事な仕事です。しかし女性が能力を発揮できる場所はそこだけではないはず。家族が総出で働いた農業中心の時代から工業化、近代化へと「離陸」した日本社会ですが、女性の力を上手に活用しているとはまだ言えません。

とはいえ、女性も企業に勤められればそれで良いと短絡させるのは危険です。たとえば政治哲学者ハンナ・アレントは「レイバー」「ワーク」「アクション」の三通りの働き方が人間にはあると考えました。「レイバー」とは生存のためにする労働。「ワーク」とは何かを作り出す仕事。対して「アクション」は他者のために、人間として何をしたらいいのか、その実現のために議論し、社会に働きかける活動です。具体的な収穫や報酬を求めるよりも社会貢献を目指す点ではNPOやNGOでの活動に通じるといえるかもしれません。

恵泉では一般的な就職活動を支援するだけでなく、卒業後にこうした「アクション」を目指す女性を育てるべく教育、指導を行い、様々な応援をしています。

2010年05月10日 筆者: 武田 徹  筆者プロフィール(教員紹介)

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