恵泉ディクショナリー
タイの洪水国際社会学科
[たいのこうずい]
タイの洪水とは
2011年10月から11月にかけて、タイのバンコクおよびその周辺で大規模な洪水が発生し、日本のマスメディアも、これらの地域に住む住民のみならず進出した日本企業などの経済活動も大きな影響を受けたことを連日報じている。
このような大洪水の直接的な原因は、上流域での50年に一度に発生するような確率の降水量(precipitation)といわれているが、それ以上に、ここまで状況が深刻化したのは、人間の開発行為ということが指摘できよう。それらは、上流域の森林(緑のダム)の農用地などへの開発・改変、中下流域のもともとは自然の遊水地であったところの住宅や商業施設・工業団地への転用、市街地のコンクリート化による地下への浸透の制限といえる。さらには、ダムの建設、河川の河道改修・築堤、排水路の建設といった治水事業への過度の依存といった側面も見逃せない。
今回、タイで発生したような洪水は、日本を含め、インドネシアのジャカルタなど他のアジアの国々でもほぼ毎年繰り返されており、その原因にも大きな差はない。
なお、洪水(flood)に関係して、浸水(inundation,外部からの水の浸入)、冠水(submergence、田畑や建物が水につかること)、湛水(inundation,水につかること・水を溜めること)といった言葉もある。
恵泉では、国際関係・社会・開発・環境といった観点から、国際関係入門、国際協力論などの講義課目で採り上げられている。
2011年11月02日 筆者: 谷本 寿男 筆者プロフィール(教員紹介)