恵泉ディクショナリー
マイクロ・クレジット国際社会学科
[まいくろ・くれじっと] microcredit
マイクロ・クレジットとは
マイクロ・クレジット(以下MC)とは、少額の資金を主に貧しい女性に貸しつけ、収入向上と女性の地位向上を支援することです。これを本格的に行ったのは、最貧国バングラデシュのグラミーン(ベンガル語で「農村の」と意味)銀行。この銀行と創設者ユヌス教授は、貧困削減に大きく貢献したという理由で2006年にノーベル平和賞を受賞しました。
MCのやり方は多様ですが、グラミーン銀行の最初のモデルは、近所の女性五人でグループを作り、そのうちの二人に最初に貸し付け、その二人がそれを投資して順調に毎週の返済を行えば、次の二人が同様に借りられ、最後にリーダーが借りられる、返済期間は利子を含めて一年間で、この間に皆が順調に返済すれば、翌年も同様に皆が融資が受けられる、逆に言うと誰かの返済が滞ると、他の四人も迷惑を受ける、というものです。字の読み書きができず、担保(返済しなかったら取り上げられる財産)になる財産がない貧しい人を対象に、銀行員が村に出かけて書類を記入して融資を行い、98%以上の高い返済率を挙げたのですから、大きな革命を実現したとも言われます。
一方このMCに対する批判も存在します。例えば、融資された資金を元手に商売などを行うことが必要ですが、元々金儲けの商売や仕事に不向きな弱者がいるし、最貧層は朝から晩まで忙しく働いているので、融資を受けてもそれを活用する余裕がありません。つまり最も貧しい層は、MCの対象になりません。またMCは女性の地位向上ではなく、女性搾取だという指摘もあります。融資された資金が夫や息子に使われる場合、女性は融資の受け取りとその返済に責任を負うという形で銀行が無償で利用している、というのです。
MCはある条件が整えば女性の収入向上に有効ですが、貧困の万能薬ではありません。
2011年12月20日 筆者: 大橋 正明 筆者プロフィール(教員紹介)