恵泉ディクショナリー
水戦争国際社会学科
[みずせんそう] water war
水戦争とは
世界の多くの地域で、水の不足などに起因する紛争がおこっている。一つは、国際河川で水の奪い合いから発生する紛争で、たとえば、インド、ネパール、バングラデシュを流れるガンジス川では、インドがバングラデシュとの国境の少し上流部にファラッカ堰を建設し、ガンジス川から大量の水を取水し、コルカタ(前のカルカッタ)の水需要をまかなっているため、下流のバングラデシュでは、乾期にガンジス川の水位が低下し、水が取れなくなっており、逆に、雨期には大量の水がファラッカ堰から放出されるため、バングラデシュでは洪水が日常化している。同様に、メコン川の上流部で中国が大規模なダムを建設したために、下流部のラオスやタイ、ベトナムではメコン川の水位が低下して、漁業などに悪影響が出ている。
これらが、水量にかかわる問題であるとすれば、水質の問題も世界中で発生している。日本では、水俣病やイタイイタイ病などの水に起因する公害に大きな代償を払ってきたが、水質汚濁の問題は、中国を含め、開発途上の国々では、解決の目処はほとんどたっておらず、状況はますます深刻になっている。
20世紀が石油の確保のための戦争の時代であったとすれば、21世紀は水戦争の時代という専門家の指摘もある。それは、世界の人口がこれからも増大し続けるとすれば、食料生産のために不可欠な水の奪い合いが起こる危険性が高まるからである。温暖化や異常気象といった環境面の脅威が水戦争の危険性をさらに高めることも十分に考えられる。
恵泉では、国際関係、社会、開発、環境の側面から、国際関係入門や国際協力論といった講義課目で水に関連する重要事項として採り上げられている。
2012年10月11日 筆者: 谷本 寿男 筆者プロフィール(教員紹介)