村井吉敬著『小さな民からの発想』の新版が刊行されました。

東南アジアの海辺や村々を歩きながら、上智や早稲田で教えた村井吉敬(むらい・よしのり 1943-2013)先生の著書『小さな民からの発想--顔のない豊かさを問う』は、1982年時事通信社より刊行され、多くの読者から高い評価を得ました。

花と平和のミュージアムは2014年の発足以来、村井吉敬先生の業績を遺し整理する個人アーカイブズ事業を行ってきました。今回のめこん社による新版刊行にあたり、アーカイブズ構築事業で、スライドデジタル化プロジェクトに従事したメンバーが、写真の選択などに協力させて頂きました。

村井先生の時代を超えるメッセージは、褪せることなく、その響きは現代においてさらに鋭く、私たちに開発とは、豊かさとはなにかを問いかけます。国の内外を問わず、巨大資本を背景とする経済活動は、グローバル化した世界を動かす原動力となっています。その実態を、生活や暮らしのなかから問い、「誰のため、何のための『開発』なのか」、その疑問を自らの声とすることができるのか、本書はそう問いかけています。

この作品は、特に若い世代の読者の手元に届けたいとの願いから、写真を増やし、旧版では著者が描いたイラストも、当時撮影した写真に変わり、新しくなりました。先生のまなざしがより鮮明になり、リアルに時代状況を読み解く手がかりになっています。

花と平和のミュージアムのスライド写真の保存・活用の成果としてもご覧いただければ幸いです。

めこん 広報