あこがれの風景

通勤電車ではもっぱら本を読んでいますが、立っているときは時々外の景色を眺めます。特にこの季節は桜から新緑へと日々移り変わる様が美しくて、本を読んでいるのがもったいない気持ちになります。私が使っている京王相模原線沿線は多摩に通い始めた頃からするとずいぶん開発されてマンションなどが多くなりましたが、それでも里山の雰囲気が残っているところも結構あります。その中でいつか下車して歩いてみたいとずっと思ってきた場所があります。線路から坂道がこんもりとした山の方へ伸びています。坂道の途中の草地には形のよい木が1本。こうして書くと何の変哲もない景色のようですが、私はとても惹きつけられたのです。あの道を行ってみたい、あの先には何があるのだろう、と。それなら行ってみればいいわけなのですが、なぜか(単にものぐさ?)長い間そうはならず・・・。もしかすると心のどこかに「遠きにありて思うもの」という思いもあったかも。

しかし!数週間前の桜満開の日曜日、突然思い立って行ってしまいました。あの坂道は花びらの舞う桜のトンネル、そしてその先は山寺の雰囲気のお寺。境内は風の音と時折聞こえるうぐいすの声だけ。背後の山はみずみずしい新緑。こんなに素敵な場所なのに誰もいなくて独り占めというぜいたく。お寺を出てさらに足をのばし、かなり急な坂道を上って行くとあたりが開けて畑や草地が広がっていました。足元にはすみれの花。たぶん、これが元々の多摩の姿なのでしょう。

数時間の散歩でしたが、とても満ち足りた気持ちになりました。今また電車の窓から眺めながら、季節が変わったらまた行ってみようと思っています。(M)

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