『旅猫リポート』雑感
有川浩。『図書館戦争』シリーズや『三匹のおっさん』でよく知られた人気作家である。映画やテレビドラマなど、映像になった作品も結構あるので、ご覧になった方も多いだろう。私はといえば、職業柄?もあって、『図書館戦争』を読んだことがある。
さて、この冬休みに彼女の別の作品『旅猫リポート』(2012年文藝春秋発行)を読んだ。猫好きの私は、まず書名の「猫」という字に反応し、「旅猫」ってどういう意味?と、何となく気になっていた。この作品は映画化されて昨年10月に公開されたのだが、その予告編をテレビか何かでちらっと見た。ハンサムな青年が、車に猫を乗せて旅するシーン。隣にちょこんと座った猫の顔が映っている。そのお行儀のよさに、「あの猫は本物なのだろうか」などと思ったりして。
物語は、一匹の猫のモノローグから始まる。彼は、縄張りの近くのマンションに住むサトルと仲良しになり、ナナという名前をつけてもらって、一緒に暮らすことに。あっという間に5年が過ぎ、サトルは仕事を辞めて、ナナの新しい飼い主を探すべく、彼を伴って車で旅に出た。行く先々での友人との語らいなど、ほっこりしながら読んでいるうちに、旅の後半になって何故サトルが旅にでたのかが判明する。不治の病にかかっていたのだ。結局ナナを手放せないまま、旅の終点である北海道の叔母の元に身を寄せたサトルの病状は悪化の一途を辿る。入院した彼の身を案じてそばを離れようとしないナナの姿は何ともけなげで、涙腺が緩みっぱなしであった。読むのが辛くもあり、話がこのまま終わってほしくない、ナナのその後が気にかかった。でも、きっと天寿を全うしたあとは、サトルと再会を果たすのだろう。
猫好きの方もそうでない方にも、おすすめである。映画は未見だが、いずれ機会があれば是非観てみたい。(Y)