福島菊次郎さん

9月24日は福島菊次郎さんの5回目の命日でした。
フォトジャーナリストとして戦後の写真史に名を残す福島さんは、14冊の写真集を世に問うていますが、いずれも現場をリアルに切り取る迫力の記録写真ばかりです。福島さんはそれらのほかに、撮影した作品をパネルにまとめ、キャプションを付けて編集し、全国の知人・友人のつてをたどってパネルの全国巡回展を長く続けてきました。自作パネルに綴られた写真のもつ迫力は、言葉では言い表せないものがあります。「孤高の人」と称される福島さんですが、自然と人間の尊厳を深くとらえ、命の在りようを問い続けて、それを侵すものには公然と立ち向かうカメラマンでした。
福島さん没後、保存会が立ち上がり、現在恵泉女学園がこの400枚に上る写真パネルをお預かりし、保存会の方々と二人三脚でその保存と活用に微力ながら力を注いでいます。
「若い人にボクの作品を見てもらいたいんだ」、そう語られた福島さんの遺志を受けて、資料の一部を託された花と平和のミュージアムは、これからどのようにそれを活かしていったらよいか、考える時を与えられています。
福島さんが生まれた瀬戸内の浜辺の写真を眺めながら、網元の子供として生まれ育った福島さんが、94歳の生涯を閉じるまでの壮絶といっていい人生を振り返り、その作品を通して、わたしたちが問われているものは何なのだろうと考えます。

晩年、90歳の福島さんを主人公とする記録映画『ニッポンの嘘』が2013年に劇場公開されました。その姿をDVDで見ることができます。図書館でも見られますので、ご利用ください。(T)