若き日に、本と出会う
神奈川県の伊勢原市にあった恵泉の園芸短大が閉じてから、今年で17年になりました。この1月には伊勢原キャンパスとのお別れ会が3日間開かれ、卒業生がキャンパスをそぞろ歩いたり、大きな枝垂れ桜を見上げたり、その下で友人たちと写真を撮ったりして、別れの寂しさの中にも、再会の喜びにあふれる企画となりました。なかびの2日目は雨のそぼ降る寒い一日でしたが、「ちょうど仕事がお休みで」とか、「子供にお母さんが学んだ学校を見せたくて」など、それぞれの理由で訪ねてくれた卒業生たちとの再会に、心温まる日となりました。
ここにも図書館がありましたが、蔵書の多くは花と平和のミュージアムに移設され、その基礎資料として現在整備中です。お別れ会では、多摩の南野キャンパスから移設されていた図書の一部を処分する必要から、参会者に公開し、お気に入りの本があれば持ち帰っていただくことにしました。
かつてチャペルとして使用していた建物の床面いっぱいに、段ボールに入った本が広げられ、足を踏み入れた本好きのかつての学生たちは、一冊一冊手に取りながら、懐かしい本との再会を味わっていました。こんな本があった、あんな本があった、と声にならない声がたくさん響いていたように思います。
ひとりの卒業生から、一冊の本について所在を尋ねられました。本の海のよう状態のなかから探しようもなく、「がんばって探して見つかったら、どうぞ」とお答えしたところ、その本を見つけたという報告を聞くことになりました。探し当てた本の図書カードのポケットには、若き日に記した彼女の名前がいくつも並んだカードがたしかに残っていました。今では図書カードは廃止され、返却日だけが押印されますが、そんなところに時代の流れを感じつつ...
学校と出会い、友と出会い、良き師と出会い、そして生涯忘れられない大切な本と出合う。大学生活ならではのそんな醍醐味を、皆さんもきっと味わえますように。
(T)