コートのかたち
3年前に買ったウールの一枚仕立てのコートがある。買う時には気づかなかったが、脱いだ時にコートの毛が大量に服に付くため、2回しか着ないまま2度の冬を越した。そうだ、裏地を付けようと思い立ち調べてみると、購入価格以上の料金がかかるようだった。諦めかけた時、洋服の仕立てや補修を行う小さなアトリエの裁縫教室を見つけた。作るものを自由に決めて良いらしい。ならば裏地付けを習おうと、新年早々から教室に通い始めた。
最初は型紙作り。フード付きコートのフード部分は、実物を型紙の上に置いて輪郭をなぞる。取り外した時に現れた形は、思わず頬がゆるむほどの愛らしさだった。パタンナー(型紙を起こす専門職)さんの思いが伝わるような線だ。
テキストを使わないので、初心者の私には次にする事が分からない。そのつど先生に聞き、言われるがままに長さを測り、線を引いていく。初めて見る曲線定規の置き方さえ分からず途方に暮れていると、先生が鮮やかな手際で手伝ってくださり、合計4時間かけて型紙が完成した。
作業の遅さやこの先の工程を考えると、恐らくこの冬の間には着られないだろう。それでも、処分していたかもしれないコートを自分の手でアップサイクルできるのは嬉しい。
間違いに導かれるようにして、思いがけない出会いに恵まれる事もあると知った。なんだか愉快で、救われる気がする。(N)