最適解
連休中のある日、立ち寄った洋服屋さんでブラウスを見ていた。ストライプ、ギンガムチェック、無地(麻)の選択で迷っていたら試着を勧められ、着てみると、自分には派手に思えた明るめの濃い青が似合うと言われた。
そういえば以前、同じような色のセーターを持っていた事を思い出した。明るい色は気分を上向かせる。でも、今はその青を着られないと感じた。疲れ気味で、強い色に負けてしまいそうだから。お店の人にそう伝え、「実は今、人生の一大事で。」と言うと、一瞬驚いた様子で応えてくださった。
自分も人生の転機を何度も乗り越えてきた。本業はセラピストだがコロナ禍で仕事が減り、離婚も経験し、世帯主として娘との生活のために販売の仕事をしている、と。そして私の背中に簡単なケアを施しながら、ご自身が教わったという先生の言葉を続けた。
「よく、物事(の結果)を良かった、悪かったと捉えがちでしょ。でも、そうするとどうしても反対の事が気になってしまう。だから良し悪しではなく、それが自分にとっての〈最適解〉だと思えばいいのよ。」
ずっと抱えていた割り切れない気持ちが晴れていった。確かに、私の〈一大事〉はいくつかの良い面と大きなリスクを伴い、中止も許されない。だが、悩みぬいた上で決断し、最悪の事態を回避する努力はしたのだ。
結局、温かみのある白色の麻のブラウスを選んだ。今の気分に合い、とても良い着心地だった。「応援しています」という言葉で見送ってくださった店員さんに心を込めて一礼し、お店を後にした。(N)