「大出張」

 日差しが厳しくなりつつも、まだ風の爽やかな休日に、活版印刷の展示館を訪れました。
都心の地下鉄の駅を降り、10分位歩いてたどり着いた古風な建物の中にはいると、活版印刷に使われた活字の棚がずらり並び、印刷機や製本機が置かれた作業場が再現されています。老舗の印刷会社が創業当時の建物を移築し内部をリニューアルして、活版印刷の工程や日本の活版印刷の歴史も理解できるような展示を構成しています。
 20世紀初めのものとされる大型の印刷機が実際に動いている様子を見る事もでき、興味津々でした。
アナログな世界ですが、展示方法はデジタル技術も駆使してわかりやすい工夫がされており、当時の職人と活字を拾う速さを競うゲームのコーナーもありました。(連敗続きでした・・・)
 活版印刷は文章の一文字一文字に対応する金属の「活字」を人間が拾い、組み合わせて原版を作成するため、同じ字の活字が沢山必要になります。その活字たちも文字によって使われる頻度が違うので、頻度別に棚に分けて入れられていたということも知りました。一番たびたび「お呼びがかかる」活字が集められた棚は「大出張」という名称が付けられており、納得。(写真)                                                                 

 労働という面では、今より厳しかったかもしれませんが、当時の本の一冊一冊には、作る人の思いが今より一層込められていたのではないかと感じました。今なにげなく手にする「古い本」も実は今後二度と生まれえないものなのかもしれない・・・。
 そんな思いをいたしつつ展示館を後にしたのでした。(A)

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