今年の夏休み
夏の終わりといえば怪談の季節。道を歩いていたら、幼稚園児らしき子供が嬉しそうに「お・ば・け! お・ば・け!」と言いながら通り過ぎていきました。私の事ではなさそうです。おばけの類はなるべく避けてきましたが、ついに遭遇したと思われる話を。
ちょうど旧盆の頃の深夜、自室で眠りかけた時にまぶたの裏に動く光を感じました。常夜灯は点けておらず、真っ暗です。「飛蚊症」の症状が悪化したのかと思いつつ目を開けると、1メートルほど先に野球ボール大の青白い炎が浮かんでいました。見たことはないけれど、たぶんこれは「ひとだま」だな。と認識した瞬間、恐怖で動けなくなりました。ひとだまは一瞬止まり、また蝶々のようにふうわりとした動きで窓の方へ飛んでいきました。視界から外れた先までは目で追えず、どこへ行ったのかは不明です(怖いですね)。
翌日、さすがに部屋の四隅に盛り塩をしました。ある程度は気が済みましたが、恐怖の記憶が鮮明すぎて、しばらくは部屋の電気を消して眠れませんでした。その出来事が何を意味するのか、対処法は間違っていないか等々の不安が渦を巻き、かかりつけの鍼灸師の先生に打ち明けてみました。すると、「集合的無意識では?」という全く予想もしなかった答えが返ってきたのです。
確かユング(の概念)だったっけ...としか思いつかず、図書館で心理学事典を調べ、河合隼雄先生の『ユング心理学入門』を読んでみました。しかし、1か月経った今もよく理解できないままです。久しぶりに「読んでも分からない」状態に陥ったショックのおかげで、恐怖はきれいに消え去りました。
振り返ってみると、「集合的無意識では?」という言葉は、「夢の続きでは?」の優しい言い換え(思いやり)だったのだろうと思います。時間の経過と共に記憶の中の現実と夢との境界が曖昧になり、ほどよく"ほろ苦い"夏の思い出になるような気がしています。(N)