夏のある朝に
この夏のある朝、ドライヤーが壊れた。スイッチを入れても「うん」とも「すん」とも言わない。前夜は全く問題なく使えていたのだった。思い出してみても使っている間に壊れる徴候は全くうかがえなかった。ドライヤーは熱を出す道具なので故障のしかたによっては危険になるだろう。扇風機でも古いものは壊れて煙を出すということも聞いたことがある。ある意味この安全な「終わりかた」は見事といえるかもしれない。これも性能の一部に組み込まれていたのだろうか。
扇風機といえば昨夏に扇風機が壊れた時、首の後ろの部分に「標準使用年数10年」とあり、その10年目がまさにその年2023年だと気づいた。扇風機の使い方は人それぞれなはずなのに、使用年数より短くも長くもなくぴったり10年目に壊れたのだ。今時は当たり前のことなのかもしれないけれど、その設計の「精密さ」に感心してしまった。こうして経済は回っていくのだろうかとも思ったり。 家でずっと使っている時計がある。緑色の文字盤に「ミッフィー」が描かれている卵型をした目覚まし時計で、その形状のため手をすべらして何度か落としたこともあるのにかかわらず壊れることなく、今も毎朝起こしてくれている。その時計の裏には「1996」と購入した年が書き込まれている。あと数年で30年。設計ミスでもいい。これからもずっと毎朝ベルを響かせてほしい。(A)