ええ、政治ですが、それが何か?:自分のアタマで考える政治学入門

岡田憲治著 明石書店(311/O)

少し前のスコットランドの独立をめぐる住民投票では投票率は80%を超えた。日本ではありえない数字ではないだろうか。テーマが特別だったからか?でも生活の中のいろいろな場でこのテーマについて熱く議論し、マイクに向かって自分の意見をはっきり述べるかの国の人々を見て、その「熱さ」が今、この国にあるかと考えてしまった。政治とはどこか自分とは関係のないところで誰かがやってくれるもの、ではなく、私たち「フツー」の市民が主役のはず。まずは政治に対するイメージと言葉を自分なりに作っていくために、著者は力まず、わかりやすく政治について語っている。(M)

 

女と金:OL財布事情の近年史

宮川真紀著 辛酸なめ子プチ時評 アストラ(367.21/M)

みなさんはどんな女性誌を読みますか?ファッションもグルメも情報はみんなネット?時代に合わせて女性誌の内容も変化しているが、変わらず続くテーマのひとつが働く女性のお財布事情。給与明細や1か月の支出診断といったものだ。著者はこのデータをたぐっていくことで若い女性の暮らしぶりや社会の変化、さらには社会における彼女たちの立ち位置がみえてくるのではと考えて、30年分の女性誌を調査した。1980年代最初の見出しは「給料は生活費ではなくおこづかい」びっくり?(M)

 

庭師が語るヴェルサイユ

アラン・バラトン著 原書房(629.23/B)

ヴェルサイユ宮殿に関する本はあまたあれど、庭園について書かれたものは、研究論文等を別にすれば珍しいのではないだろか。ヴェルサイユの庭園一筋30年、裏も表も知り尽くした現役の庭師による、過去・現在にわたって綴られる知られざるエピソードをお楽しみあれ。(Y)

 

紙つなげ!彼らが本の紙を造っている : 再生・日本製紙石巻工場

佐々涼子著 早川書房(585/S)

東日本大震災で大被害を蒙った日本製紙石巻工場の復興までを描いたノンフィクション。被災後、食料もライフラインもままならないなかで、紙の供給を途切れさせてはいけないと、従業員一丸となって工場を復旧させた。ものづくりの、プロとしての心意気。日頃私たちが何気なく手に取っている本は、こうした人たちによって支えられているのだ。(Y)

 

東北コットンプロジェクト:綿と東北とわたしたちと

宮川真紀文 中野幸英写真 タバプックス(369.3/M)

東日本大震災により、インフラの破壊や津波による土壌の塩害により稲作が困難になった地域。そこに塩害に強い綿を育て、オーガニックコットンで東北を救おう。本書は、震災後間もなく立ち上がり、今年で4年目を迎えたこの「東北コットンプロジェクト」のレポートである。日常ではほとんど見かけない綿花だが、明治までは日本でも栽培は盛んであったとか。被災者の立場に根ざした支援とは何かを改めて考えさせられる一冊。(A)

 

だれも知らないムーミン谷:孤児たちの避難所(シェルター)

熊沢里美著 朝日出版社(993.6/J23)

アニメの「楽しいムーミン一家」のほのぼのとしたイメージが強いムーミン。しかし原作の登場人物たちの多くは孤児たちであり、ストーリー全体は彼らの生きる世界の崩壊と再生の物語でもある。またこの作品自体の成立の背景には作者トーベ・ヤンソン自身が生きていた戦争や検閲のある現実世界の影がさしている。読者はそれまで知らなかった「ムーミン谷」へ深く導かれていく。(A)