牛と土 : 福島、3.11その後。

眞並恭介著 集英社(645.3/S)

東日本大震災による原発事故のため、警戒区域内の家畜たちを殺処分するようにとの指示がでた。家族同様の動物たちを残して家を離れなければならなかった人々の苦衷は、察するに余りある。一方、被ばくした牛たちと区域内に留まった牛飼い農家もいた。この4年間、様々な苦労があったと思うが、今、牛たちは元気に生きている。(Y)

 

<ルポ>かわいい! : 竹久夢二からキティちゃんまで

青栁絵梨子著 寿郎社(361.5/A)

Manga(漫画)、Karaoke(カラオケ)のように、日本語がそのまま海外で使われている言葉が増えている。Kawaii(かわいい)もその一つで、日本文化に関心を持つ外国の若者たちにもすっかり定着したようだ。本書によれば、「かわいい」は、今に始まったことではなく、大正時代にまで遡れるとか。日本ではなぜかくも「かわいい」が流行るのか。竹下夢二やキティちゃんなどを通して、その人気の秘密を探る。(Y)

 

リンドグレーンと少女サラ:秘密の往復書簡

アストリッド・リンドグレーン、サラ・シュワルト著 岩波書店(949.8/L63)

大好きな作家に手紙を出したいと思ったことのある人は少なくないのでは?でも実際に出してしまう、さらに文通を続けるとなるとめったにあることではない。有名な『長くつ下のピッピ』の作者、リンドグレーンは読者からたくさんの手紙をもらい、返事を出したが(それだけでもすごい)、12歳の少女サラとはその後、80通以上もの手紙を数十年にわたってやりとりした。思春期の悩みを打ち明けるサラに対して、リンドグレーンは時にユーモアを交えながら誠実に手紙を書き続けた。子どもの側からも大人の側からも、興味深い本。(M)

 

続・百年の愚行

小崎哲哉+Think the Earth  一般社団法人Think the Earth(209.7/O)

人類の愚かしさの記録として2002年に『百年の愚行』を出版したとき、編集者は続編を作ることになるとは思わなかったという。なぜなら私たちは過去の体験から学んで、21世紀にはその修正を行うだろうから・・・。しかしその希望は失望にとってかわられ、結局作られたのが本書である。21世紀はますます混沌とし、個人が何をできるのかと無力感にとらわれてしまうが、まず現実を直視し、各章に書かれている解決へのヒントを手がかりに考え続けなければならない。本書の刊行にはクラウドファンディングで集められた資金も使われているということにささやかでも希望を見出したい。(M)

 

少女は本を読んで大人になる

クラブヒルサイド+スティルウォーター編 現代企画室 (019/S)

作家、俳優、研究者、翻訳家、ディレクターなど各分野で独自の人生を拓いてきた10人の女性たちが、読書会のトークゲストとして一人ずつ招かれ、観客との交流も時にまじえ、一冊の本への特別な思いを生き生きと語っている。選ばれた本は、『赤毛のアン』『アンネの日記』『嵐が丘』など古典的な名作揃いだが、実は十代での第一印象は必ずしも良くなかったり、まるで人との出会いのような本とのかかわり方も面白い。選ばれた本にちなんで毎回用意されたサンドイッチのレシピがとても美味しそう。(A)

 

もっと知りたいマグリット

南雄介、福満葉子著 東京美術(723.35/M)  

見慣れた日常世界を成立させている何気ないものや風景のイメージ。その思わぬ組み合わせで、全く違う不思議な世界が生まれてしまう驚き。それがマグリットの絵の面白さだろう。そのイメージ力ゆえに、彼の絵はイメージのまさにあふれている私たちの日常世界に問いかける現代性があるとのこと(解説より)。という理屈はさておき、今ちょうど開催中の大回顧展で、本物の作品の不思議な世界をまず体験してみるのもおすすめです! (A)