知って役立つ民俗学 : 現代社会への40の扉

福田アジオ責任編集 ミネルヴァ書房(380.1/S)

知っているようで知らない日本の生活文化。今日の日常生活を巡る様々な事象を「神と自然」など10のテーマに分けて解説。きちんとした研究に基づきながら、かといって内容は肩の凝るものではなく、「おひとりさま」「サザエさん家族」など入りやすそうな話題が取り上げられているのも初心者には有難い。(Y)

 

パーソナルデータの衝撃 : 一生を丸裸にされる「情報経済」が始まった

城田真琴著 ダイヤモンド社(007.3/S)

昨年はベネッセの、そしてこの5月には年金機構の個人情報が外部に流出し、大問題となった。私たちの個人情報は宝の山らしいので、どんなに気を付けていようと、これからも同様の事件が起こる可能性がある。まして、来年1月からはマイナンバー制度が始まる(通知は今年10月)というのに、このままで大丈夫なのだろうか。個人情報についての意識を高めるためにも役に立つ一冊。(Y)

 

「孤独力」で"ひとりがつらい"が楽になる

水島広子著 さくら舎(159/Mi96)

ひとりでいる「寂しい姿」を見られたくないばかりに、食事をするのを我慢する人もいるという。人間は社会的な生き物。他者との関係無しには生きられない。しかし著者によれば「一人居」を避けるためだけの人間関係は時間的にも、精神的にも代償が大きい場合も多い。人とのみならず、「もの」や「こと」とでも、「ありのままの自分」がつながっている時、人の心は初めて充たされる。そんな本当の「つながり」のための「孤独力」なのだ。(A)

 

共通番号の危険な使われ方:マイナンバー制度の隠された本質を暴く

白石孝・石村耕治・水永誠二編著 現代人文社(317.6/S)

今年の10月からいよいよ実施される「マイナンバー制度」。マイナンバー(わたしの番号)とは言いながら、そもそも12桁もの番号を憶えきれるのだろうか?といっても自分の覚えやすい様に変更したり、パスワード化することも許されず、誰もが知りうる可能性の中で、その唯一の番号が「私」に結びつくしくみといえる。本書ではこの様なマイナンバーが将来拡張的に使用される場合の「なりすまし」やプライバシーの侵害などの問題点(危険性)をわかり易く解説している。(A)
      

 

ファーマゲドン:安い肉の本当のコスト

フィリップ・リンベリー、イザベル・オークショット著 日経BP社(611.3/L)

タイトルから連想するのはもちろん、ハルマゲドンである。意味するところは農業がもたらすハルマゲドン。食糧危機を解決する手段として、工場での野菜生産や遺伝子組み換えによる温暖化に強い品種開発などのいろいろな試みがなされている。が、果たしてそれが本当に解決になるのか。今や世界全体の家畜の3分の2は工場式畜産によるものという。ブロイラーの鶏は1羽あたりA4用紙1枚ほどの面積に詰め込まれる。遺伝子組み換え作物は種子を採種するものから買うものへと変えてしまった。背筋の凍る現実を次々と突きつけられるが、最後に著者は、私たち消費者は1日3度の食事を通じて変化を起こすパワーがあると主張する。(M)

 

未来を変えた島の学校:隠岐島前発ふるさと再興への挑戦

山内道雄ほか著 岩波書店(318.2/Y)

本書の舞台のひとつ海士町は「島まるごと図書館構想」というユニークな活動で有名である。海士町のある隠岐諸島は典型的な過疎の地だ。1965年に住民の熱い願いによって分校から自立した島の高校は廃校寸前となっていた。それが今や全国から、いや海外からも入学希望者が来るような高校となっている。よそから島に来た人、島の大人たち、生徒たちが力を合わせて様々な活動を始め、それにより一層、島への愛着が増し、冷ややかに見ていた人々、行政も巻き込んで島の未来を切り開いたのである。図書館構想もその一環であろう。都会にも違った意味での「過疎の地」があるように思うが、その解決のヒントにもなるのでは。(M)