もう東京はいらない : 地域力を高めた9つの小さな町の大きな話

日本経済新聞社編 日本経済新聞出版社(361.7/M)

以前、『限界集落株式会社』というテレビドラマを見た。過疎化・高齢化が進むなか、村おこしに頑張る村民の話だ。本書は、日経新聞記者が、実際に地方の小さな町に住んで、住民自身の手による地域活性化のための創意工夫を取材したものだが、矢張り、である。行政に任せっきりにするのではなく、自分たちで地域の問題に取り組んでいく姿は、同じ問題を抱える多くの市町村にも参考になるのではないか。(Y)

 

「居場所」のない男、「時間」がない女

水無田気流著 日本経済新聞出版社(367/M)

仕事一筋で家庭は全て妻任せ、定年を迎えて、私的な人間関係が乏しいために地域から孤立する夫。かたや、家事・育児・仕事に追われ、自由な時間が持てない妻。人口の大多数を占めるサラリーマン家庭に生じる夫婦の溝に、お互いが幸せになる方法はあるのだろうか。(Y)

 

1945←2015:若者から若者への手紙

室田元美、北川直実・聞き書き ころから(210.75/M)

戦争のときに若者だった人たちの戦争体験を読み、現在、同年代の若者たちがその人たちにあてて手紙を書く。編者の一人があとがきで書いているように1回きりの一方通行という面はあるだろう。しかし、なんでもメールで済ませてしまう現代に、過酷な体験を次の世代に伝えようと懸命に語った人に対して若者側も一生懸命考えてその思いを伝えるために手紙を書くというこの試みは戦争の記憶の継承方法の新しい形になるのではないか。手紙を書いた若者の中には恵泉の卒業生もいます。(M)

 

ヒロシマの少年少女たち:原爆、靖国、朝鮮半島出身者

関千枝子著 彩流社(217.6/S)

しばらく前に原爆投下直後の広島の写真を最新の技術で復元する番組を見た。セーラー服の少女の後ろ姿が忘れられない。あの時8000人以上の少年少女が建物疎開作業で働いていて約6000人が死亡した。原爆の悲惨さに年齢や性別は関係ないとはいえ、これほど多くの子どもたちがこの作業は「お国」のために大事だと思い込まされ炎天下に駆り出された挙句に死亡という事実はあまり知られていない。病気のため作業に出ずに助かった著者は今年が最後の機会と思い定めて本書を著した。この悲劇を私たちは知らなければならない。  (M)

 

10代からの情報キャッチボール入門:使えるメディアリテラシー

下村健一著 岩波書店(361.45/S)

「キャッチボール」といっても沢山の球がすごい勢いで同時に投げられてくる、現代の情報化社会は、そんなイメージではないだろうか。そんな中で、他の球にぶつかるのを避けながら、素早く、正しい球をキャッチし、そして自分からも受け手に向かって確実に投げ返す、まさに体で覚えるようなトレーニングが現代に生きるためには必須であることが、本書からは伝わってくる。情報に対する思い込みを防ぐための「4つのぎもん(疑問)」と情報をしっかり届けるための「4つのじもん(自問)」。ネットの世界にはもちろん必須だが、日常的場面でも不可欠なコミュニケーションの基本的技術が、わかりやすく説明されている。 (A)
 

 

コンテンツツーリズム研究:情報社会の観光行動と地域振興

岡本健編著  福村出版 (689.3/O)

この本の表紙の写真にある精巧な「おうち型」ポスト、そういえば以前に「本物の」ハガキをここにうっかり投函しそうになったのだった!実はこのポストは「青春のポスト」と名づけられた架空のポスト。アニメ映画「みみをすませば」の舞台となった多摩地域の風景やスポットを巡るファンたちに向けて、地元で設置されたという。このように、現実の空間がアニメや映画の虚構の空間の舞台となることで、観光スポットとなり、さらにそれがネットなどの情報空間で話題にされ集客力が増す、といった「コンテンツツーリズム」の世界が展開され、今注目が増している。本書はこのテーマをを研究したい人に向けて様々な事例とともに詳しく解説したものである。(A)