知らなかった、ぼくらの戦争

アーサー・ビナード著 小学館(210.75/B)

1967年、ベトナム戦争のさなか、アメリカに生まれた戦中世代の著者が、23名の戦争体験者に直接取材し、ラジオ番組で放送したのを纏めたとのことである。実際にあの戦争を生き抜いてこられた方々の談話だけに説得力があり、読む者の胸に響く。また、それぞれに添えられた著者の文章もあたたかい。戦争を知らない世代が多くなっている今、是非手に取ってもらいたい。(Y)

 

大航海時代の日本人奴隷:アジア・新大陸・ヨーロッパ

ルシオ・デ・ソウザ 岡美穂子著 中央公論新社(209.5/S)

日本史上、奴隷といえば思い当たるのは古代の「奴婢」くらいであったのだが...。さるテレビ番組で、豊臣秀吉の頃(スペインやポルトガルが海外に乗り出していった大航海時代)に多くの日本人が奴隷として海外に売られていった、との話を聞いてびっくりしたことがある。このことは余り知られていないのではないか。何故奴隷に? またその実態は? 豊富な史料をもとに、歴史の影の部分に光をあてた貴重な一冊。(Y)

 

集団就職:高度経済成長を支えた金の卵たち

澤宮優著 弦書房(366.2/S)

朝ドラで「集団就職」という言葉を思い出した人も多いと思う。「集団就職」といえば、東北から上野駅へ、というイメージがあるが、それは関東の人間の思い込みかもしれない。ここで扱われているのは九州や沖縄から大阪や愛知へ就職した少年少女である。仕事を選ぶことなどできず、ひたすら働いた時代、それに比べれば今は-と果たして言えるだろうか。働くというのはどういうことかを考えてみたい。  (M)

 

暗い時代の人びと

森まゆみ著 亜紀書房(281.04/M)

どんなに暗く絶望的な時代でも、小さな明かりをともすために闘う人々がいる。本書に出てくる9人は日本の「暗い時代」、1930年から45年に様々な立場から自分なりの闘いを挑んだ人々である。その中には治安維持法による女性逮捕者第1号という人もいる。知らないうちに個人の自由や権利が奪われ、平和がおびやかされていくとき、私たちはどうすればいいのか。ここで語られているのは決して過去の出来事ではないのだ。  (M)

 

人はこうして「食べる」を学ぶ

ビー・ウィルソン著 原書房(498.5/W)

いま当たり前の様に食べているものでも、初めて口にする瞬間がかならずあったはず。人間の「食べる」には「学び」や「技術」が意外に深くかかわっている。性別や兄弟姉妹関係をめぐる食について、偏食、拒食への実際的な対処法など、「食べる」ことをめぐり内容は多種多様に開けている。(A)

 

日本の色のルーツを探して

城一夫著 パイ インターナショナル(757.3/J)

ある時代に生きていたら、赤い服は一生着られなかったかもしれない!まさに日本的と感じる北斎の版画の海の色。実は当時「ベルリンブルー」とも呼ばれた「輸入色」だった。国も遠く隔たり、時も越え愛された瑠璃色(=ラピスラズリ)の青・・・。色の系譜の「深さ」「広さ」には驚かされることばかり。自分の好きな色の「系譜」から読んでも楽しい。(A)