空白の移民史:ニューカレドニアと沖縄

三木健著 シネマ沖縄(334.4/M)

ニューカレドニアと聞いて思い浮かぶのは、南太平洋にあるフランス領の島で、作家森村桂の旅行記『天国に一番近い島』で有名になったことくらいである。19世紀末からこの島へ日本人が出稼ぎ移民として渡り、20世紀初頭には沖縄からも加わったということは、この本を手にするまで全く知らなかった。このことは他のメディアでも殆ど取り上げていないと思う。彼らは異国の地でどのような運命をたどったのか。日本の移民史を知る上で貴重な一冊。(Y)

 

 

ワンオペ育児:わかってほしい休めない日常

藤田結子著 毎日新聞社(367.21/F)

ワンオペという言葉を初めて知った。ワンオペレーション=一人ですべての労働をこなす、という意味だそうだ。転じて、母親一人で育児も家事もこなすのが「ワンオペ育児」である。昔も今も育児は本当に大変だ。私は自分の母親がじっとしているのを見たことがない。まして今は周りに助けてくれるような祖父母、ご近所がいなかったりする。そこで肝心の配偶者たる男性だが、「イクメン」という言葉がはやる割には、お手伝い感覚が抜け切れていない感がある。考えを変えていかないと少子化は止まらないのでは。(Y)

 

そろそろ、部活のこれからを話しませんか:未来のための部活講義

中澤篤史著 大月書店(375.1/N)

「部活」というと「これぞ青春!」みたいなイメージと、体罰などの負のイメージがある。最近ではさらに教員の過労という問題も加わっている。中学、高校と当たり前のようにあった部活だが、考えてみると不思議なことだらけだ。そもそもカリキュラムには含まれていない。グラウンドなどの使用権は強い部優先だったり(誰が決めていたのだろう)、練習日・時間もまちまち、専門外の教員が顧問、などなど。学校時代のよい思い出として、またその後の人生の糧にもなりうるような部活をどのように作っていけばよいのか。今こそ、考えてみよう。(M)

 

戦う姫、働く少女

河野真太郎著 堀之内出版(367.2/K)

ディズニー映画(「アナ雪」)や宮崎駿アニメ(「千と千尋」)などおなじみのポピュラー・カルチャーの中で女性の労働がどのように描かれているかを論じている。アニメっぽい表紙に誘われて手に取ると専門用語続出でひるむかもしれないが、こんな見方があるんだと、今まで知っていたつもりの作品が全く違って見えてくること間違いなし!(M)

 

パパは脳研究者:子どもを育てる脳科学

池谷裕二著 クレヨンハウス(491.3/I)

脳科学者の著者による娘の成長記。脳科学者だけに、生まれたばかりの赤ちゃんの成長の一歩一歩に脳の成長の過程を見る。「根に持つ」などということも記憶力がある程度育って初めてできること、「嘘をつく」ことともなると、時間や空間などの物理的な感覚を越えた「心理空間」があって初めて可能な高度な認知行動なのだという。人ひとりが当たり前に育っていくことはそれだけですごいことなのだと改めて感じてしまう。(A)

 

人類はなぜ肉食をやめられないのか:250万年の愛と妄想のはてに

マルタ・ザラスカ著 インターシフト(383.8/Z)

肉食が及ぼす健康問題や環境への負荷を認識しながらも人類が肉食をやめられないのはなぜか?「ヒト」への進化は「肉食」との出会いにあった、という250万年も遡る人類と肉との深い「縁」に始まり、肉独自の「うまみ」の魅力や栄養価、「狩り」ともかかわる肉食の象徴的・文化的な意味合いや菜食主義にも及ぶ著者の広範な視点が「わかっているのにやめられない」理由に迫る。(A)