動物園の文化史:ひとと動物の5000年

溝井裕一著 勉誠出版(480.7/M)

大自然の中で自由に生きている動物を人工的な空間に閉じ込めて、さらに人目にさらすのが動物園だ、と言ってしまうと、そこに価値を見出すことは難しいかもしれない。しかし「文明社会」の中で忘れられている「野生」(それには悪臭やハエなど不快なものも含まれる)を体験し、自然との結びつきを思い起こすことは私たちに必要なことだ。動物園が金持ちの権力の誇示の場だった時代から5000年。たくさんのユーモラスなエピソードとともにその歴史を振り返ってみよう。(M)

 

謎とき『風と共に去りぬ』:矛盾と葛藤にみちた世界文学

鴻巣友季子著 新潮社(93A0.24/Mi59-K)

スカーレットといえば、ヴィヴィアン・リーの意志の強そうな顔が浮かぶ。一方でメラニーは弱々しい聖女のイメージ。ところがそれは映画での話。原作は違うのだ。著者によればメラニーは結構「黒い」!本書を読んでいるといろんな発見で目からウロコが落ちまくる。著者のアクロバティックな読みときに興奮し、翻訳ものを読む楽しみに目覚めて原作を読みたくなること間違いなし。そして、次には映画を見たくなるだろう。たとえ見たことがあったとしても。(M)

 

手で見るいのち : ある不思議な授業の力

柳楽未来著 岩波書店(378.1/N)

中学生が動物の骨を触って「いのちを学ぶ」。盲学校(視覚特別支援学校)では難しいとされていた生物の観察授業の体験ルポである。板書も教科書もない。何の骨かも知らされない。自分の手で触れ感じたことを発言し、気付いたことを点字で記録し、最終的に何の動物か判断する。そんな授業を始めた教員や継承した教員、感性を磨いた生徒達から「学ぶこと」の意味を考えさせられる。(T)

 

私たちにはことばが必要だ : フェミニストは黙らない

イ・ミンギョン著 タバブックス(367.2/L)

韓国で起きた、女性嫌悪(ミソジニー)犯罪とも言われる江南駅殺人事件をきっかけに書かれています。何気なく投げられる女性蔑視な言葉に、どう対処すればいいかを教えてくれるマニュアルのような本です。他国の話なのに共感できる点が多く、具体例は実践で取り入れやすいものばかりです。(C)

 

ビーガンという生き方 

マトク・ホーソーン著 緑風出版(498.5/H)

「ビーガン」は動物搾取の産物を可能な限り一掃しようという考え方、ライフスタイルである。対象は肉や乳製品、蜂蜜などの食に限らない。絹、毛羊毛による衣服や、革製品、動物実験を経た化粧品なども避ける。こうした「脱搾取」の思想は、人種や性差別への反対、環境への配慮にもつながっていく。「ビーガン」をいきなり実践するのはむずかしそうだが、その視点から当たり前と思っている生活のあり方を見直してみることはできそうだ。(A)
                                   

 

もっと知りたいクリムト:生涯と作品 

千足信行著 東京美術(723.34/K)

本書では「もっと知りたい」というタイトルどおり、作品などの分かりやすい解説とともに、画家やその作品についての意外な面にも触れている。ちなみにクリムトは、陽気な性格で元気はつらつの巨体の持ち主、相撲(レスリング?)が好きだったとは相当意外。現在開催中の「クリムト展」のお伴にもいかがですか?(A)