アイヌからみた北海道一五〇年

石原真衣編著 北海道大学出版会(316.8/I)

「北海道」命名一五〇年とは、アイヌの人々の生活が一変してから一五〇年ということでもある。この機に、アイヌの人々の声が集められた。命を引き継いだすべてのアイヌの先祖たちへの感謝と尊敬からくる、物語を継承し伝えたいという思いからである。境遇により思いは様々だが、未来をいいものにと願う思いが強く感じられた。多文化共生の未来について共に考えてみませんか。(C)

 

解きたくなる数学

佐藤雅彦, 大島遼, 廣瀬隼也著 岩波書店(410./S)

表紙からあの教育番組を連想してしまう。ページをめくれば確信し、頭の中であのテーマ曲が流れる。間違いなくあの教育番組の制作に関わっている著者である。ふむふむと理解できることから、大人でも、いや大人になったからこそなのか、どういうことなのか考え込んでしまうようなことまで、身近なものから数学を学ぶことができる。(Y)

 

アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? : これからの経済と女性の話

カトリーン・マルサル著 高橋璃子訳 河出書房新社(331./M)

著者の出身国であるスウェーデンは、国連発表のジェンダー不平等指数(GII)で世界3位(2020年当時)。SDGsのゴール「ジェンダー平等を実現しよう」の達成に近い印象ですが、実際は男女の賃金格差や、女性管理職の登用面で遅れがあるとの事。その理由を、男性中心の(女性の無償労働を無視した)経済学の考え方にあると捉え、ジェンダー経済学の視点から考察した本です。
経済理論は現実にそぐわず問題解決の手段にならない事は明白なのに、未だに世界を動かす考え方の主流であり続けている。誤った前提自体を見直して、人口の半分の実態を無視した考え方を変える時では?という著者の提言に深く頷けました。読むと、未来に少し期待が持てます。(N)

 

人類冬眠計画

砂川玄志郎著 岩波書店(481.7/K)

一見SFの世界を連想するようなタイトルに惹かれた。実際のところ人間の「冬眠」が実現すれば生命倫理や人権に影響を与えることもあるらしい。とにかくまだ謎が尽きないテーマなのだが、実は冬眠が救急医療への貢献できそうだからなど、「冬眠」に対する著者の研究の姿勢はあくまでも実践的。そこに一種の意外性があったし、それがこの本の魅力の一つにもなっていると感jじた。(A)            
 

 

朝鮮戦争と日本人 武蔵野と朝鮮人 

五郎丸聖子著 クレイン(319.1/G)

朝鮮戦争を知っていますか? そして、それがまだ終わらない戦争だということを。日本列島と日本海を挟んで隣り合う朝鮮半島で、二つの国が38度線で向き合い戦争状態にあることを、私たちはほとんど意識することがありません。東欧の戦争をニュース解説で見聞きし心を痛めつつ、「北朝鮮ミサイル発射」の速報をまたかと受け流す私たちの日常を問い直す一冊。著者は他者への想像力の欠落に向き合い、自らを問いつつ、日本と朝鮮半島の関係を見つめています。(T)