岐路に立つ「動物園大国」: 動物たちにとっての「幸せ」とは?

太田匡彦, 北上田剛, 鈴木彩子著 現代書館(480.7/O)

2022年6月札幌市議会で全国初の動物園条例が可決し成立した。種を守り動物本来の生活環境に近づけるための動物福祉に配慮したものだそうだ。動物園は公立・民間共に財政難で、動物を入手するには余剰動物を転出させるのが一般的であり、なかには動物商経由でペットショップに転売され、消息が分からなくなるケースもあるという。身近な動物園や世界の野生生物が消滅してしまわないよう、動物園の新たな取り組みに期待したい。(Y)

 

みんな水の中 :「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか

横道誠著 医学書院 (493.7/Y)

青みがかった不思議なイラストの表紙が印象的。「水中世界」に閉じ込められたような著者の日常の感覚を表現しているという。医学用語ではなく、文学作品の引用や、自作の小説などを通して語られる当事者の「発達障害者」の世界は、そもそも障害とは?という問いかけでもある。支援の欠如、社会環境との不一致が人を「障害者」にすると著者。そのことは、何事も個人が自己任を負いがちな社会の在り方をも想起させる。(A)

 

つながり続けるこども食堂

湯浅誠著 中央公論新社(369.4/Y)

こども食堂と聞いたら「食べられない子」のためだけの場所、と思う人も多いだろう。この図書を読めば、そんなイメージががらりと変わる。誰が行っていいの?大人は?などの尽きない疑問もこの本が解決してくれる。人との繋がりが減った今の時代にこそ必要な場所である。正しい知識を、是非とも読んで知ってほしい。(C)

 

「その他の外国文学」の翻訳者

白水社編集部編 白水社(801.7/S)

 やりたい事に踏み出せない、何かを始めて壁にぶつかっている、好きな事を仕事にして食べていけるか不安だ。そんな人には特におすすめです。読む事で、そっと背中を押してもらえます。
 もちろん、外国文学の「初めの一歩」に最適ですし、翻訳に興味がある方は見逃すと(たぶん)後悔するでしょう。(N)

 

自分で始めた人たち : 社会を変える新しい民主主義

宇野重規著 大和書房(318./U)

 何かを変えたい、と思っているあなたへ。本書は、身近な社会的課題に挑戦し、自分たちのアイデアで社会を動かしていこうとする人々とその活動が7例14名のインタビューと座談会で紹介されています。子育てやコミュニティ活動、フードドネーション、データや統計をガバナンスに活かす民間企業まで、「社会がいいと思うものより、一人がいいと思うものへ」(211頁)、未来をめざす女性たちの斬新な視線に注目です。(T)