小泉文夫(音楽家の伝記 はじめに読む1冊)

ひのまどか著 ヤマハ(762.1/K)

民族音楽の分野では余りにも有名な小泉文夫の伝記本。世界各国でのフィールドワークに生涯を投じ、日本の"民族音楽ブームの火つけ役"でもある。人間性豊かな彼の活動と研究は、音楽にとどまらず社会全体にも多大な影響をあたえた。歴史に残る人物であることが読み終えたときに再び気づく。写真も多く読みやすい文体、更にこの伝記シリーズはQRコードを読み取ると音楽(音)を聴くことができる点など幅広く楽しめる内容になっている。(S)

 

「ナパーム弾の少女」50年の物語

藤えりか著 講談社(289.2/P)

ベトナム戦争末期、撮られた一枚の写真が世界に衝撃を与えた。本紙の表紙にある、ナパーム弾により大火傷を負った少女の写真だ。本書は、その少女キム・フックの波乱万丈の半生が描かれている。火傷の苦痛、政府の監視下のもとプロパガンダに利用される日々、亡命...。その半生を通して、戦争被害後も続く苦悩をよりリアルに知ることができる貴重な一冊である。(C)

 

ルポ 誰が国語力を殺すのか

石井光太著 文藝春秋(372.1/I)

なぜ自分が不登校になったのか、分からない。実はわからないのではなく、理由を語るべき「国語力」がないのだ。
「国語力」とは、豊かな語彙を「燃料」に、表現力や想像力、論理力を駆使できる力、社会という大海に漕ぎ出すのに必要な「心の船」ともいうべきもの。
「国語力」は自分と世界を把握できる力でもある。ゆえに「国語力」を失う深刻さは計り知れない。
教育の現場、ネット依存、ゲーム依存などで「国語力」がこどもから奪われる深刻な現状に迫り、またそれを取り戻すための挑戦的取り組みも紹介している。(A) 

 

アウシュビッツのお針子

ルーシー・アドリントン著・宇丹貴代美訳 河出書房新社(234.07/A)

ある日突然、普通の生活が奪われ、強制労働と称して大量殺りくが目的の絶滅収容所へと送られる。かろうじてガス室送りを逃れても、飢餓やはく奪、屈辱、残虐行為、肉親を含めた死別が日常となる。極限状態の中、お針子としてナチス親衛隊の高級服仕立て作業場で働くことをきっかけに、支配する側とされる側の関係性が揺らぎ、少しずつ人としての尊厳を回復していく。

膨大な記録文書と、生還したわずかなお針子たちの貴重な証言を通して、支配者側を含めた関係者一人ひとりの人生や当時の状況が丁寧に綴られている。(N)

 

江戸で部屋さがし

菊地ひと美著・絵 講談社(383.9/K)

上京するには部屋を探し、その街を知ることが必要だ。予算内の快適な部屋か、通勤・通学や買い物に便利か。それが江戸時代だったらどんな暮らしになるのか。「町人」の章では、店や長屋の住まい・生活必需品などを大家さんの案内で見学。「武家」の章では、身分によって規模や立地の異なる屋敷を旗本の息子の案内で見学。見学者との会話とともに、カラーイラスト化された文献があり、江戸の暮らしを想像できる。(Y)