世界は五反田から始まった

星野 博美著 ゲンロン 2022年(213.6/H)

タイトルの『世界は五反田から...』を見て"五反田⁈"とナゼか興味が湧いた。
厳しい時代を賢く生き抜いてきた著者の祖父の話で進められ、戦時下のこと、三代続いた町工場のことなど考えさせられる深い内容だが、重々しくなく優しい気持ちになる読みやすい一冊。どこかほのぼのとした雰囲気が漂うのは、東京の歴史(物語)を「五反田」いう斜め横あたりから見ているように感じるからか...。そして様変わりした現在の五反田を訪れてみたいとも思った。(S)

 

震災を語り伝える若者たち : みやぎ・きずなFプロジェクト

瀬成田 実著 かもがわ出版 2022年(369.3/S)

東日本大震災を経験し、中学校での震災学習を経て「きずなFプロジェクト」を立ち上げた若者たち。震災を知らない子どもたちにも、紙芝居という手法を通して震災を語り伝えています。彼らは、私たちに大切なことを伝えてくれています。読んでその想いを受け取ってください。そしてあなたも伝えてください。伝えることで大切な人を守れます。(C)

 

羊皮紙の世界 : 薄皮が秘める分厚い歴史と物語

八木 健治著 岩波書店 2022年(584/Y)

羊皮紙とは、羊・ヤギ・仔牛の皮から作られる紙のこと。紀元前2世紀には存在し、聖典や公的証書に使われてきました。その作り方や歴史、活版印刷の発明(15世紀)により植物由来の紙が広く流通した後も羊皮紙が使われ続けた理由などが、豊富な図版と共に紹介されています。400年以上も前から「なりすまし」や「改ざん」を防ぐための様々な工夫があったのですね。実物の羊皮紙サンプル付き!(N)

 

ヤングケアラーとは誰か : 家族を"気づかう"子どもたちの孤立

村上 靖彦著 朝日新聞出版 2022年(369/M)

ヤングケアラーとは介護をする子供とは限らない。心を病む親を気遣い、親の障がいや苦境を心身両面で支える日々。彼らの日常の一部と化した労働以外の曖昧な部分にこそ、当事者自身にさえ気づかない心理的苦しみや負担、困難があるのであり、それを掬(すく)い取ろうという試みが本書である。7人のヤングケアラー経験者のインタビューは、彼らのSOSをキャッチするために、家庭以外の子供の「居場所」が重要な役割を果たすことも明らかにしている。(A)