人・地域と「出会う」ためのレッスン 人間環境学科

2009年11月23日
 投稿者:松村 正治
 ゼミ/授業名:松村ゼミ(環境社会学)

3年生を対象としたゼミは、金曜日の1-2限に開講しています。カリキュラム上は1コマ分のゼミを2コマ連続しておこなっているのは、しばしば大学周辺にあるフィールドや施設を訪ねるので、1コマでは時間が不足してしまうからです。

例えば、キャンパスの南側に位置する里山を歩きます。そして、北側の多摩ニュータウンと違って、なぜ緑が広く残っているのか、なぜ森は鬱蒼としているのか、なぜ墓地の開発は進むのか、などの問いを投げかけます。よく見慣れた景色であっても、都市計画の考え方や里山の成り立ちを理解していないと、こうした問いに答えることは難しいでしょう。
ただし、里山を歩くのは、難しい顔をしながら考え込むためではありません。大学の近くに素敵なフィールドがあること、そこを散歩するのが楽しいことを体感し、身近な地域を見つめ直してもらいたいからです。だから、6月には谷戸田でホタル鑑賞もおこないます。

また、ユギ・ファーマーズクラブ(八王子市堀之内)が管理している田んぼへ行き、田植えと稲刈りをすることもあります。この場所を訪ねる目的は、米づくりの一部を体験するだけではなく、なぜこの田んぼが残ったのかを考えるためでもあります。田んぼの辺り一帯は、ニュータウンとして開発される予定だったのですが、土地の買収に抵抗した人たちや支援した人たちの働きかけがあって今に残っています。そうした事実から、目の前に見える環境には社会の意志が現れていることを学び、私たち次第ではもっと環境を良く変えられるかもしれないという感覚を身につけてもらおうと思っています。

さらに、女性の多様な働き方を知るため、ワーカーズコレクティブ凡(町田市小野路町)のジャム・シロップ生産工場を訪問します。ここでは、「小さくても誇りを持って生命を育む食づくりをしたい」という経営理念を掲げ、それを元専業主婦の女性たちが「みんなが出資し、働き、経営する事業体」で試みています。3年生の後半には就職活動が始まるので、偏狭になりがちな職業観が少しでも解きほぐそうと思って訪ねています。
このほかに、障害者にとっての良い環境とは何だろう、飼育動物にとっての良い環境とは何かを考えるために、社会福祉法人共働学舎や多摩動物公園を訪問したりもします。夏休みには、2泊3日のゼミ合宿で、ふだん出会えない人・地域を訪ねます。

私が専門としている環境社会学では、環境について考えるためには社会のことも理解する必要があると捉えます。私個人の経験では、自分が共感できる人・地域との「出会い」から学ぶのがよいと思っています。松村ゼミでは、私の学び方を追体験することによって、一人ひとりにとって大切な人・地域との出会い方を学ぶレッスンとしています。

ワーカーズコレクティブ凡
http://www.bon-machida.or.jp/

社会福祉法人共働学舎
http://kyoudougakusya.at.infoseek.co.jp/

ヨシ原再生について聞き取り調査(宮城ゼミ合宿)

稲刈りと脱穀を終えて(八王子市堀之内)

担当教員:松村 正治

私たちの社会は、私たちにとって必要であるはずの環境を破壊しています。この問題を解決するために私は、社会に生きる人びとが、環境を守る方向で、ともに考え、行動するための場や仕組みを作りたいと思っています。だから私は、どうしたら環境と共生できるのかを考えるよりもまず、いかにして他者とともに生きるのかを考えます。

松村 正治