ある夏の日、私の研究室で4年生が卒論を進めるため、心理学の本を調べている。別の日には、3年生が勉強をしている姿がある。そうかと思うと、昼食やお菓子を研究室で皆で食べながらプライベートな話をして、お互いに生きるための知識を増やしている。ここで、心理学の理論的な学びと生きてゆく上で必要な考え方を学生たちは学んでいる。そして心理学を修めるために必要な、目には見えない「場」「環境」があることに目を向けさせられ、さまざまな人に支えられて自分が成り立っていることに少しずつ気づく。
日々、「心理学統計」や「臨床理論」の面白さに笑顔がこぼれ、難しさに眉間にしわが寄り、手を抜けない学習のしんどさにポロポロと涙がこぼれる。そうした厳しい学びの中、心理学が、入学前になんとなく思い描いていた幻想とは異なることを知る。あたりまえと思っていたことに疑問の目を向け、確かめてゆく。心理検査なども実は、何度かの統計的処理の工程を経て妥当性、信頼性などをクリアしたものであることが分かってくる。そうした紆余曲折で学生たちの学習は腑に落ちた実のあるものとなる。したがって、卒論は一つ一つ自ら研究計画を立て検証してゆくことを求められる。手引き本などなく相当つらいはずである。その成果を、学会方式で卒論審査として受ける。緊張の時である。
ゼミ生は、こうして学びの苦しさと楽しさを仲間と共に乗り越え、さらに合宿などで気持ちがつながり、かけがえのない友情を得てゆく。すべては財産となる。
そのゼミ生たちの進路は、一般企業就職、専門学校へ進み保育士、教師、養護教諭などになるなど多岐に亘る。これからも厳しい学びと温かい交わりのあるゼミであり続けたい。