大学院・平和学研究科の授業から 国際社会学科

2010年07月30日

-パレスチナ人のダルヴィッシュ先生が教えるイスラム教と平和-

本学大学院・平和学研究科では、7月28日から8月31日にかけて、主にアジア各地のムスリム平和活動家や学者などからなる連絡組織・AMANから、ダルヴィッシュ・モワド(Darwish Moawad)先生をお招きし、「イスラム教と平和」と題する夏季集中講義が行われています。 夏休みが始まったばかりですが、大学院生は、イスラム教の基礎から、イスラム的視点から捉えた平和や人権、経済的格差の問題に至る幅広いテーマを英語で学んでいます。

モワド先生はクウェートで生まれ、インド、オーストラリアで学んだ後、現在、タイのPrince of Songkla Universityで教鞭をとっています。彼のご家族は第一次中東戦争で難民となったパレスチナ人で、このとき、家族は財産の大半を失ってしまったということですが、 さらに、89年のイラクのクウェート侵攻によって、彼の家族はもう一度、財産を失うという悲劇に見舞われてしまいます。こうした国家による二度にわたる財産の簒奪という経験によってモワド先生が学んだことは、「お金や土地はなくなってしまうかもしれない。 しかし、知識は違う、知識こそが本当の財産だ」という教訓だったそうです。
ところで、本学平和学研究科には、将来、NGOや国際機関で働くことを夢見て、研究に勤しんでいる大学院生もいますが、彼らがこの集中講義を履修しているのは当然のこととして、特に意欲のある国際社会学科の学部生の中にも聴講者がいます。 ややもすれば、いわばぬるま湯の中に浸かってしまいがちな学生にとって、故郷を喪失したディアスポラとして平和の意義と教育の重要性を身をもって体験してきたモアド先生の言葉は、その心に深く刻まれていることでしょう。

ダルヴィッシュ・モワド先生をお招きしました

「イスラム教と平和」夏季集中講義の様子