「庭園文化」のゼミでは3年生の春学期に各学生がイギリスと日本の庭園の歴史、そして庭園の花のそれぞれについて一つずつテーマを決めて調査をして発表します。 イギリスの庭園については文献から、日本庭園と花については現地を訪ねてまとめます。 秋学期はこれらのテーマの中から自分が最も興味のある一つのテーマに絞り、それについて各自が3回に渡って発表します。 4年生になると、そのテーマをさらに深めて卒論に結び付けていきます。 今回は調査と発表が進行中の3年生の李解さんと、12月9日に卒論を提出したばかりの4年生の井上美奈子さんにゼミの様子とテーマについて書いていただきました。
庭園を通して世界が繋がっていく
西村ゼミでは春学期には、皆それぞれが東京・神奈川の庭園を訪ね、イギリスの庭園文化を文献で調べて、さらに庭園に用いられる花の咲く植物を取り上げ発表しました。 それをきっかけに、日本庭園とイギリス庭園のそれぞれの独自性がかなり明らかになりました。 また、日本庭園にはイギリス庭園の影響で造られたものもあること分かりました。
秋学期には、春学期に引き続いて、各自自分のテーマを決めて、それについてまとめて発表する形をとっています。 私は悩まず今から6年ぐらい前に訪れた「蘇州古典園林」をテーマにして発表を進めています。 経済の高度成長とともに、中国は世界での存在感が高まっています。 中国そのものは歴史が長い国ですが、庭園では、特に、世界文化遺産に登録されている「蘇州古典園林」を数多くの人に知っていただきたいと思っています。 といいますのは、蘇州は私の出身地である江蘇省にあり、故郷の美しさを世界に紹介するのは私の役割ではないのかとも考えます。
「蘇州古典園林」にはかなり多くの庭園が含まれています。一回目の発表は拙政園を選びました。 拙政園は蘇州の中で最大の規模を誇り、その広さは5ヘクタールに及びます。 そして、日本庭園の一つの特徴として簡素さがあげられることに対して、拙政園はいずれも亭、堂、楼、館が多く、バラエティー富んだ庭で、発表内容を絞るのに大変苦労しました。 けれども、調べているうちに、造園の素晴らしさや示されている思想に改めて感動し、すごくいい勉強になりました。
最後の発表では「蘇州古典園林」の中のもう一つの傑作である「退思園」について、配置図を示しながら、その庭園の来歴、構造を紹介しようと思います。 その後、古くから人文・自然環境に恵まれて造られた「蘇州古典園林」の全体の特徴をまとめて発表したいと考えています。
李 解
「ガートルード・ジーキルの作庭に影響を与えた事々」
ゼミは庭園文化について歴史や機能だけでなく、何故そのような形態になったかなど、より具体的な成り立ちを調べる授業です。 実際に先生が訪れたイギリスの写真など多くの映像資料を使いながら説明を受けるのでとてもわかりやすいと思います。 授業で書くレポートではただ単に問題を調べるだけではなく、実際にある日本庭園へ出かけてレポートを書くこともありました。 さらに、アジサイの咲く季節には全員で鎌倉の庭園めぐりハイキングなどのイベントもあります。
卒業論文を書くかどうかは自分の意思で決めます。私はイギリスの園芸家ガートルード・ジーキル(1843-1932)の庭園とその庭に影響を与えたものについて調べて書きました。 詳しい内容は4年生の春に決めたのですが、テーマを選んだきっかけは3年生の冬に調べたレポートでした。 レポートでは19世紀ヨーロッパの絵画の流行について調べたのですが、その中で園芸家であるジーキルも風景画に影響を受けていたと知ったことで美術と庭園の関係が気になり卒業論文のテーマに選択しました。
初めは単にジーキルの使う色彩が影響を受けているだけだと思っていましたが、調べていくうちに美術以外にもイギリスと庭園との歴史的な関係や、19世紀当時の社会的な影響を与えていることがわかり、調べる幅が広がっていきました。 授業で学んだ内容が役にたった部分も沢山ありましたが、もちろん全てが順調に進んだわけではありません。 たとえば当時の芸術運動と庭園の関係性について調べるのは今まで知らない知識を得る楽しさもありましたが、調べたことを文字にして伝えるのは少し大変でしたし、名の知られていない人だと生没年を調べるだけでも一苦労ということもありました。 それに、実際にある庭園のどこが影響を受けているのかを探し出したり、ジーキルとこの人物の関係は?思想の違いはどうか?などと、やることはてんこ盛り、「一体どこから手を付ければいいんだ!」とてんてこ舞いになったこともしばしばありました。 しかし、先生の助言を受けながら何とか書き上げた時や、自分が大学に行ってどんな勉強をしたか、それが形となって目の前に現れた時、今まで苦労したことが全ていい思い出にすることが出来ました。 苦しい時もありましたが、大学で過ごした4年間の集大成として書き上げることができて良かったと今は満足しています。
井上 美奈子
イギリスと日本の庭園について調べていくと、両者が驚くほど似た形を取る時代と、全く異なる時代とがあることが分かります。 また、花も庭園の時代を特徴づけるものになっています。 今年は李さんが蘇州の庭園を取り上げたので、3つの庭園様式を比べることができるようになりました。 私はそれぞれの学生が自分のテーマについての調査やまとめに伸び伸びと取り組んでいくことを願っています。
西村悟郎