神話のもつ現代的意味を考える 歴史文化学科

2011年05月19日
 投稿者:岩村 太郎
 ゼミ/授業名:岩村ゼミ

文化学科3年の岩村ゼミでは、中沢新一著の『人類最古の哲学』という本をテクストにしてキリスト教学・哲学・神話学を多角的に学んでいます。人数は学生7人と少所帯です、毎週木曜日のⅡ時間目に集まりとても楽しく勉強をしています。おそらく皆さんは哲学とか神話学と聞くと二歩も三歩も引いてしまい、自分とはまったく関係のない世界だと思っていませんか?

説明神話という言葉を知っている人は案外少ないでしょう。私がよく引用する一つの神話を紹介します。昔々ギリシアに絶世の美少女アラクネーという娘がおりました、彼女は美しいだけではなく能力も高く、さらに織物を織らせたら誰にも負けません。万能で欠点がないくらいの人でした。それを知ったアテナ女神は嫉妬も手伝って怒り狂います、「人間の分際で、アラクネーは生意気だ」。アテナ女神は天上から人間の姿に変身し、すっとアラクネーに近づきます。そして自分と一体どちらが美しい織物を3日間で織れるか競争をしようと申し込んだのです。ギッタン、バッタンと二人は必至で競争をしました。ところが負けるかもしれないと思ったアテナは再び天上に戻り、アラクネーの織物をのぞき見しました、すると何と女神である自分より美しい織物をアラクネーは織っているではありませんか。慌てたアテナは魔法をかけてアラクネーを醜い昆虫のクモに変えてしまいます。だから今でもクモは昔の習性で、あちこちでクモの巣を作り続けているというのです。
ちょっといい話でしょう、クモの巣の成り立ちを神話的に説明し、そのイメージを広げた古代ギリシア人には頭が下がります。そしてテクストにある人類最古の哲学とは、このような神話のことなのです。「しっかり古典を学んでから、思い切って現代に応用」これこそが岩村ゼミの目指すところです。

担当教員:岩村 太郎

神は存在するか、時間に始まりはあるか、人間は自由か、男女間に友情は成立するか、歪んでいない純粋な三角形は実在するか、これらは永遠の問いであると言われています。ぜひ皆さん、私と一緒に楽しく真剣に語り合いましょう。そして日常を少しだけ離れて、究極的なことがらについて考えましょう。

岩村 太郎