2年生の「日本語基礎講読III」では、『堤中納言物語』の影印本と、変体仮名の字典『字典かな』をテキストとして、変体仮名を読む練習をしています。ひらがなは漢字の形を簡略化することによって、カタカナは漢字の一部分を独立させることによってできた文字ですが、カタカナが一字一音対応なのに対して、昔のひらがなにはさまざまな種類がありました。それらのほとんどは、現代では使われなくなっています。ですから、受講生は今まで見たこともないような、奇妙な文字と格闘することになります。
変体仮名を覚える近道は、字母を覚えていくことです。字母とは仮名の元になった字のこと。たとえば、ひらがなの「つ」は、「川」の崩しですが、変体仮名によっては、より「川」に近い文字もあります。そのような文字に出会っても、「つ」の字母が「川」だという知識があれば、容易に読めるのです。
もう一つのコツは、同じ形の字を探すこと。一連の文章には、同じ形の文字が出てくることが多いのです。似ている字を判別する時に、この方法は有効です。なんだかパズルを解くような思考法で、仮名文字を読むことができるはずです。また、写本の書き手にはそれぞれ独特の癖がありますから、その癖を飲み込むと、すらすらと読めたりします。
最初はみんな苦労しますが、学期が終わるころには、かなり読めるようになります。ひとつのテクニックですから、自転車に乗るのと同じこと。身につけると、博物館に行った時なども楽しめます。ただ、継続的に読んでいないと読む力が衰えるのが難点です。