歴史学方法論 I 日本語日本文化学科

2013年02月22日
 投稿者:梅澤 ふみ子
 ゼミ/授業名:歴史学方法論 I

どのような分野の研究でも、最初は専門家が書いた著書や論文を読んで知識を得ます。そこからもう一歩進んで、まだ誰も調べていないことを研究しようというときや、これまで読んだ著書や論文に納得がいかないことがあるときは、自分でナマの資料(一次資料)にあたって調べることになります。学生の皆さんも、卒業論文を書くときにこれを経験します。

この授業は、平安時代から昭和時代までのいろいろな時代の一次資料をとりあげて、書いてある内容が信用できるか、書いてある内容から何がわかるか、わかったことを組み合わせるとどのような仮説を立てることができるかを、経験しながら学びます。もちろん資料にウソが書いてあることもあります。そのときは誰がなぜウソをついたのかを考え、そのことから何がわかるかを考えます。
たとえば、桜田門外の変の数日後に英国公使が井伊直弼の「けが」のお見舞いを述べている手紙を取り上げてみます。歴史好きの人なら「え?井伊直弼は殺されたのではないの?」と思うでしょう。実はそうなのです。この授業では、英国公使に井伊直弼が「けが」したと伝えたのは誰か、その人はなぜウソをついたのか、英国公使はその情報を信じたのか、もし信じていなかったとするなら、彼はなぜお見舞いの手紙を書いたのか、というようなことを調べたり、話し合ったりします。そして幕末の政治と外交について、教科書に書いてないことを学びます。3年生以上対象の授業ですので、卒論を書くときなどに役立ててほしいです。

歴史の研究には史料批判、史料の分析・解釈が不可欠である。これは他の社会科学にも応用できる。この科目では、古代から近代までの多様な種類の一次史料を用い、史料批判や解釈・分析の基礎を体験を通じて習得する。
古代から20世紀前半の多様な史料を読み、史料の信頼性を検討し、分析し、解釈する。仮説を立てたり結論を出したりすることを体験する。20世紀前半の日本語の読解力が必要。毎回のテーマは以下の通り。(事情により、実際の授業で部分的に変わることがある。)
(1)一次史料と二次史料:先輩の卒論から
(2)政治的文書の虚実:「桜田門外の変」と英国公使見舞状
(3)政治的文書の虚実:「桜田門外の変」の処理
(4)説話・物語:平安時代と徳川時代の結婚のプロセス
(5)説話・物語:平安時代と徳川時代の不倫への対応
(6)プロパガンダ:戦時下の女性雑誌の漫画
(7)ルポルタージュ:「大陸の花嫁」に関する雑誌記事
(8)アニメーション:「海の神兵」と占領地での日本語教育
(9)台湾総督府の先住民政策

担当教員:梅澤 ふみ子

皆さんは、歴史を暗記科目だと思っていませんか。でも、実は、文字や絵や地図や遺物という形で過去の人々が残した様々な手がかりを組み合わせて推理する学問なのです。恵泉の授業で、その楽しさを皆さんと一緒に体験したいと思います。

梅澤 ふみ子