京都フィールドトリップ―メディア都市を読み解く  現代社会学科

2015年03月04日
 投稿者:教養基礎演習II(武田徹ゼミ)

現代社会学科では、1年次の秋学期に開く全てのゼミで、フィールトリップ(FT)を実施しています。武田徹ゼミでは京都を訪ねました。

今回の京都FTの目的は、都市文化を「メディア」として読み解くこと。メディアというと「放送」や「新聞」というマスメディアをすぐに思いますが、メディア論(media studies)という学問は、マスメディア研究を含みつつ、より広く、原則的な視点でメディアを捉えようとしています。
というのも「メディア」の語源のひとつは霊媒(メディウム)。霊媒とは「この世」と「あの世」を繋ぐ媒介役を果たす霊能者です。こうして「繋ぐ」役目として使われるようになった「メディア」という言葉は、近代になってマスメディア、最近ではソーシャルメディアといった言葉をも生み出すに至りましたが、その原点に立ち還って「何かと何かを繋ぐもの」の全てを「メディア」だと考え直してみると、京都は実にたくさんのメディアがある都市といえないでしょうか。

たとえば京都に数多くある寺社はまさに「この世」と「あの世」、「聖」と「俗」を繋ぐメディアです。寺社を含む京都の歴史的建造物の数々は日本の過去の伝統を現在に繋ぎ、海外からの観光客の訪問を受けて日本的なものとアジア的なもの、欧米的なものを繋ぐ役目を果たしています。

また京都は東京にも増して個性的な喫茶店、カフェが多く存在しています。たかがカフェというなかれ。職場や地域の人間関係を離れて自由な立場でカフェで時間を過ごす人たちが相互に議論を交わすことで新しい「ものの見方」=文化が育まれます。カフェがそうした文化のゆりかごとしての役目を果たした例として、19世紀末ウィーンのカフェで出会った若い研究者たちが、相互に刺激しあうことで、後に精神分析学や言語哲学といった20世紀をリードする新しい研究を育んだ例があります。京都もまたノーベル賞受賞者を含む、独創的な学者を多く生み出した場所。そこに京都のカフェがメディアとしての機能を発揮したと考えることは出来ないでしょうか。
また京菓子や京料理、舞妓や祇園の習俗、町家建築なども「京都らしさ」を示すことで人々を繋いでいるといえるでしょう。

そんな「メディア都市」京都をメディア論として読み解く、というのがこのゼミの目標です。フィールドトリップは学期末(1月26日(月)~27日(火))に設定し、授業期間内のゼミでは事前学習を行いました。事前調査として「京都の歴史(遷都前)」「京都の歴史(遷都後)」「京都の街づくり」「京都の食文化」「京言葉」「京都の大学」「京都人気質」、「京都の産業」、「京都の観光事情」、「京都出身の著名人」のテーマを各自分担して調べ、発表。次いで自分たちで主体的にテーマを選ぶということで「聖と俗をつなぐメディア――京都のパワースポット」「メディアとしての西洋建築」「伝統を表現する京料理、和菓子」の3つがグループテーマとして選ばれ、それぞれグループ単位で分担調査して発表しました。その後、更に個人別研究テーマを設定、京都での現地調査を組み込んだかたちで調査計画を作って京都に向かいました。

以下にゼミ生たちが今回の京都FTにおいて、グループや個々人で訪ねた場所を幾つか上げておきます。フランソワ喫茶店(戦前に文化人が集まり、雑誌『土曜日』発行の拠点になった喫茶店)、農産物直売所「じねんと市場」(京都産野菜の地産地消の拠点)、伊右衛門サロン、ヨージ屋清水店 伏見稲荷、清水寺、金閣寺、国際漫画ミューアジアム...。
帰京後、「○○をメディアとして見ると」「○○は何と何をどのように繋ぐメディアとなっているか」をレポートとして書き上げて半年のゼミは終了しました。

舞妓コスプレは「京都らしさ」を演じるメディア

寺社は縁を結ぶメディアとしての場所でもあった

戦前に文化人が集い、機関紙『土曜日』刊行の拠点になった喫茶フランソワ。

ヨージ屋祇園店の抹茶ラテ。東洋の茶と西洋の珈琲文化が出会う。ラテアートの表情も和風

サントリーが経営する京都カフェのニューカマー「伊右衛門サロン」前で集合写真。

担当教員:武田徹

p>マスコミ志望者にはメディアと社会の関係を理解し、メディア経由での社会貢献の実践を期待します。また、マスコミ組織に所属せずとも誰もが発信者になれるソーシャルメディアの時代に、一市民の立場で身近な社会問題を広く訴えてゆく「一人ジャーナリズム」を実現できる調査力、表現力を全ての学生が身につけて欲しいと思っています。