ゼミで文芸創作、か 日本語日本文化学科
2018年02月07日
投稿者:日本語日本文化学科3年 神谷桜子
ゼミ/授業名:林 浩平ゼミ
恵泉女学園大学3年、文芸創作ゼミに所属している神谷桜子は、夜中の真っ暗な自室の布団の中で小さくため息をついた。
彼女は迷っていた。卒論について、だ。恵泉女学園大学は、卒業論文を、卒業制作という形で、文芸創作で提出できる。その内容は、小説だけでなく詩や短歌、エッセイに戯曲など、自分が書きたいものを選ぶことができるのである。
「三年の春学期には短歌に俳句に詩...。秋学期には小説を書いた。どれも、大変だったが楽しかった、な」
神谷は思いをめぐらせる。ゼミで、林先生のご指導の下、様々な形式の作品を仕上げた。ゼミ生の前で自分の作品を発表するのは少し恥ずかしかったが、それでも自分の作品について生の感想を聞けるのは嬉しかった。文芸創作ゼミご担当の林先生からその場でご指導いただけるのも、大変ありがたい。
「春学期の「ラクリモサ」も、秋学期の「フーガ」も、いい出来だったし」
「ラクリモサ」、「フーガ」は、自分たちの作品を載せた冊子の名前である。
学期末には、ゼミ生の作品をひとつの冊子として纏め上げる。その冊子を120部作るのは大変骨が折れるが、その分愛着が湧く。編集長や表紙作成者に冊子タイトルを自分たちで決め、一から作り上げたのだ。
「それより卒論だ。何を書くか決めなきゃ...」
ふと、神谷は体を起こし、恵泉女学園大学のシラバス、日本語日本文化学科の卒業制作の欄を開いてみた。パソコンの煌々とした画面の明かりがほどけるように部屋に満ちる。そのまぶしさに目を細めながら、ページをのぞくと、ある一文が目に入った。
「表現したい主題に相応しい言葉を与えて、完成度の高い卒業制作作品を目指しましょう」
私が表現したいことって、何なのだろう。神谷は夢想する。相応しい言葉を与えられた私の表現したいことは、きっとなによりも美しく輝く。その輝きは、生涯忘れられることはないし、もしかしたら、ずっとこの世界に残っていくのかもしれない。
そこまで考えた神谷は、少しだけ寂しい気持ちで、パソコンを閉じた。残ったのは、幸福と、不安と、期待の入り混じったなにか、だった。
担当教員:林 浩平
詩人として詩作品の創作や随筆の執筆を行ないます。また近現代日本文学を対象に文学研究を行っています。萩原朔太郎、折口信夫、瀧口修造、吉増剛造らが専門です。さらにロック音楽を論じ、現代アートやコンテンポラリー・ダンスを批評します。