英作文と「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」 英語コミュニケーション学科
2022年01月12日
ゼミ/授業名:英文作文(常葉クラス)
英語コミュニケーション学科の科目である「英文作文」の授業では、"子供っぽく聞こえてもとりあえず通じればいい" 英語ではなく、その状況や立場にふさわしい表現は何かを考えた上での "大人っぽいコミュニケーション"のための英語力を目指しています。実際に英単語や英語表現の使い方を学ぶことはもちろんですが、目上の人へのメールやビジネスコミュニケーションの際にどのような考え方・振る舞い方が求められるのか?や、なぜこの単語・表現を使うとこのニュアンスになるのか?という英語の世界観についても理解を深めています。
昨年秋の授業では、英語での「丁寧な依頼」の表現を取り上げました。英語にも、非常に丁寧な表現からそれほど丁寧ではない表現まで色々バリエーションがありますし、これは英語に限りませんが、相手に気持ち良くこちらの依頼を伝える際には様々な工夫が可能です。
クラスでは、大学の先生へ用件を伝えるメール文の例をいくつか比較し、どのメールのどのような部分が不適切でどう改善したらよいかを小グループに分かれて話し合ったり、「自分が留学していた大学の指導教員に、就職活動で必要になった推薦状の依頼をする」という状況を想定して実際にメール文を書く練習をしたりしました。
ちょうど、日本で1月7日に公開されるマーベル映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(Spider-Man: No Way Home)」の予告動画がYoutubeにアップされ、3部作の完結編ということもあり世界中で非常に話題になっていた時期でした(※海外では12月に映画公開)。タイムリーなことにこの予告動画中に「丁寧なお願い」の表現が使われていたため、リスニングの練習も兼ねてこの動画をクラスで見てみました。
映画「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」予告動画の一場面
前作映画の最後でミステリオ(Mysterio)により、自分がスパイダーマンであることを世間にばらされてしまった高校生ピーター・パーカー(Peter Parker)。そのことで自分だけでなく周囲の人々にも被害が及ぶにいたり、強大な力を持つ魔術師ドクター・スティーブン・ストレンジ(Dr. Stephen Strange)に、自分がスパイダーマンであるという世間の人々の記憶を魔術で消してもらえないだろうかと頼みに行く場面です。
(以下の( )内は公式予告動画に付けられている日本語字幕ですが、短い字数で意味を伝えるために英語のセリフとは少し違った言い回しになっています)
ドクター・ストレンジ:So Peter, to what do I owe the pleasure?(ピーター いったい何の用だい?)
ピーター:[ ① ], sir...(急にお伺いしてすみません)
ドクター・ストレンジ:Please, we've saved half the universe together. I think we're beyond your calling me "sir."(一緒に宇宙の半分の命を救った仲だ 遠慮しなくていい)
ピーター:OK. Stephen.(なら スティーブン)
ドクター・ストレンジ:That feels weird but I'll allow it. (まぁ良しとしよう)
ピーター:When Mysterio revealed my identity, my entire life got screwed up. [ ② ]... (ミステリオに正体を明かされて、僕の人生はムチャクチャだ あなたの力ですべてなかった事に?)
ドクター・ストレンジとはかつて共に戦った経験があると言っても、なかなか大変な頼みごとをしようとしているピーター。実際にどんな表現でドクター・ストレンジにお願いしようとしているでしょうか?
ソニー・ピクチャーズ映画による公式「予告1」動画の0:55付近からが上記の場面です。こちらをクリックして実際にyoutube動画を見てみてください。
日本語でも、何かお願いをする際には「お手数をおかけて申し訳ありません」「もしも可能なら」「していただけないかと」といった、控えめで丁寧な表現を使うことがありますが、実はピーターも①・②の箇所でそれと似たような英語表現を使っています。
(①・②で実際なんと言っているのかの答えはこの記事の最後にあります)
映画やドラマは、その英語表現がどのような状況・人間関係の中でどのような意味を伝えたいがために使われているのか、実感を持って理解するのに、とても役に立ちます。特に、映画の予告編はyoutubeで手軽に見られますし、また、海外のファンの反応もコメント欄で読むことができるので面白いです。セリフが速すぎてなんと言っているのかわからないという時には、英語ネイティブの先生の研究室に質問しに行って、先生の母国での人気度や反応を聞いてみたりするのもおすすめです。
今回「英文作文」の授業の中で「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」予告を見てみましたが、「マーベルについては名前を聞いたことがある程度」「スパイダーマンのことは少しは知っているが詳しくは知らない」という反応がほとんどでした。アメリカや海外での大変な人気に比べると、なぜか日本ではマーベル作品は一部のファンを除いてまだあまり広く知られていません。ですが近年マーベルは、Kpop界やゲームFortniteなどと相互的なコラボを盛んに行ってきており、案外自分の身近なところにつながりが存在しているかもしれません。ちょっとしたきっかけから色々な方向に興味関心を広げていくのも、大学での勉強の楽しさではないでしょうか。
<予告動画の中のピーターのセリフの答え>
① I'm sorry to bother you ② I was wondering if maybe you could make it so that he never did
担当教員:常葉 美穂
皆さんは英語「を」読んでいますか、それとも英語「で」読んでいますか? 世界の教育に影響を与えたブラジルのパウロ・フレイレという人は、単に文字の字面を読むのではなく、言葉が表す「世界」を「読む」ことが重要だと考えました。また「教育とは伝達ではなく、思考・認識の対象をめぐる教師・生徒の対話である」とも主張し、教師のコトバを生徒が貯め込む「預金型」教育モデルを批判しました。こんな内容を扱うのが、教育哲学や教育理論の分野です。