庭づくりのワンポイント

まちの庭たち

2012年02月29日

まちで出会った庭や、庭づくりの現場で感じたことなど、まちの庭やみどりについてつれづれに書いていきたいと思います。
最近こんなご相談が受けることが多くなってきました。『自家用車を手放すことになったので、駐車場を庭にしたいのですが、どうすればいいですか』と、わたし自身を顧みましても、子どもたちが小さい頃は夏休みにキャンプに出かけたり、急病の折には病院に連れて行ったり、車は今よりもずっと必要な道具でした。でも子どもたちが独立しつつある今、車は週日は駐車場に置かれたまま、週末もほとんど乗られる事はありません。首都圏の貴重な土地、これほどもったいない事はないと思います。
早速、コンクリートの舗装を剥がし、穴の空いたブロックを敷き、隙間に芝生を植えることをご提案しました。これで降った雨も土の中に戻っていき、気化する水分は、周辺の熱を奪って夏の暑さを和らげてくれることになります。まわりには中低木を植え、いずれは落ち着いた庭となるでしょう。長い間コンクリートで固められていた地面が久しぶりに水を吸い、息をし始め、やがて木や草が甦ってくる風景は見ていてほっとするものです。

ドイツの環境派の人々は、一軒の家が一台づつ車を持つ事を『毎朝1杯の牛乳を飲むために、各家庭で1匹づつ牛を飼うようなものだ』と言うそうで す。なるほど、と思います。多くのヨーロッパの国々の環境政策の大切な柱にノーカー・コンセプトと言うのがあります。過度の車依存を是正する事によって、 CO2の排出量を減らす事が出来、車の渋滞で歩行者を引き付けなくなっていた街の中心も活気を取り戻す事ができます。車に代わって再び市民の足として期待 されつつある路面電車の軌道はグリーンベルトにもなる。ノーカー・コンセプトにはいくつものご利益があるのです。翻って我が国では、あまりノーカーが叫ば れる事はないのですが、自動車が主要産業である事に関係があるのかもしれません。
それでも世代の交代が進むにつれ生活のスタイルが 変わり、もうあまり車を必要としないのであれば、駐車場であった場所に少しづつ緑を再生していくのはどうでしょう、たまに訪れるお客様や子どもたち家族の ための最低限の機能は残しつつも。ぽつぽつとそんな家々が増えてきたら、この国のまち並みも少しづつ柔らかなみどりの表情に変わっていくような気がしま す。

芝生も生える穴の空いたブロックによる駐車場

目地からも草が生えてくるレンガ舗装による駐車場

このページを他の人と共有する

 

このページのトップへ