「花の友」で澤田みどり先生の連載開始

2018年02月26日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

本学社会園芸学科の澤田みどり先生の連載「植物の力~園芸療法から考える~」が公益財団法人日本花の会発行の「花の友」でスタートしました。

澤田先生といえば、日本で最初の園芸療法を学ぶ団体『NPO法人日本園芸療法研修会』を設立し、その代表理事として実践者育成に尽力されていることで著名な方です。
園芸療法学会理事、学会専門認定登録園芸療法士として、20以上の施設でスーパーバイザーとしても活躍されています。
大学では「園芸療法基礎」「園芸療法実践応用」「社会園芸応用実践」などを担当されています。
先生の教えを受けて園芸療法士になった学生もいます(*後記参照

園芸療法とは、草花や野菜、身の回りにある自然等とのかかわりを通して、心身の健康や社会生活における健康の回復を図る療法で、日本に紹介されて25年以上になりますが、まだよく知られていないようです。そこで、園芸療法について紹介し、私たちの日々の暮らしの中に植物とのかかわりを改めて見直す契機となれば、と願って執筆をスタートされたとのことです。

連載の第1回目は、澤田先生の園芸療法との出会いについて書かれています。
お母様がお花をお好きで、家にいつもお花が植えられている環境で育ったことが、そもそもお花や植物の世界に魅せられたきっかけでいらしたとのことです。
また、園芸療法という言葉は、お姉様(ガーデンデザイナーの奥峰子さん)が留学先から送ってくださった本の中のHorticultural Therapyという文字に惹かれて、澤田先生自身が訳した言葉だったとのことです。花に親しみ、植物を愛されたお母様のお心がお姉さまと澤田先生へと引き継がれていったといえましょう。

澤田先生もお姉様も、共に恵泉の中学・高校・短期大学園芸生活学科の卒業生です。
恵泉時代に教えを受けた山口美智子先生の授業で、海外では障害のある方でも同じように植物を楽しめる工夫がされているというお話に大きな衝撃を受けられたとのことです。
その後、澤田先生もアメリカに留学し、知的障害を持つ方々の施設で共同生活をすると共に、アメリカ園芸療法協会会長ナンシー・スティブンソンさんの下で研修を積んだ経験へと話が展開していきます。

澤田先生を受け入れてくださったナンシー・スティブンソンさんの、あるがままの相手を受け入れて共感しようとする姿勢、また、園芸作業を通して障害がある方がそれぞれの能力を活かして、達成感や満足感を得て、仕事を楽しみ、自己有用感を得ていかれたというお話はとても感銘深いものがあります。

しかし、その園芸療法を日本に取り入れようとしたとき、その道のりはけっして平坦ではなかったようです。ある公立植物園では"植物園は文科省の管轄。あなたがやりたいことは厚労省の管轄。学ぶ場は障害者の福祉の場ではない"と拒絶されたとか。このエピソードには、行政の縦割りのおかしさ以上に、その結果、人間を分断してとらえてしまう悲しみも覚えます。

こうした紆余曲折を経て、さて、澤田先生の園芸療法がどのようにして今日に辿り着いていくのでしょうか?そして、この先の展望は?と、わくわくさせられます。

「花の友」は季刊の会報誌です。これからの連載がとても楽しみです。
日本花の会HP

*園芸療法士資格について
所定の科目の単位取得に加え、500時間の実習が必要です。
授業と就活も兼ねての資格取得は容易なことではありませんが、チャレンジする気持ちが大切!恵泉の卒業生で園芸療法士の資格を持っているのは3名。施設等に勤務し、障害のある方々と共に花を栽培する等の仕事に従事して活躍中。在学生では現在、6名の学生が資格取得を目指して頑張っているとのことです。
なお、この資格は社会人入学の方も、また科目等履修生の方でも、修得可能です。