人として美しく生きるために~地域共生社会構築をめざして~
2024年02月19日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美
先週のこのブログでは、女性に対して"ルッキズム"的言動をとることの問題性を述べました。(「いつまで女性たちを"ルッキズム"に晒すのですか?!」)
女性を評価する際に容姿が美しいか否かなどに言及することは、言語道断です。
しかし、私たちが生きていくうえで、「美しさ」は無用かというと、そうではなく、むしろ、「人として」の生き方の根底をなすものではないかと思います。
少し前のことですが、鎌倉の禅宗(臨済宗)寺院・円覚寺塔頭 黄梅院前の掲示板に次のような言葉が記されていました。
どんなに苦しい目にあっても あたたかい愛の涙の持ち主であることだ
(横田南嶺管長揮毫による 坂村真民氏の詩)
ここで言われている人間の美しさとは、他者への「あたたかい愛の涙」を失わないことです。
そして、それは「男女を問わず」「人として」生きる姿勢の基本とされています。
本学が学生たちに身につけてほしいと願っている『生涯就業力』も同じです。
本ブログで繰り返し述べてきた『生涯就業力』ですが、その心は、「人生、何があっても自分らしく生きることを大切にすること。そうして自分の大切さを知ればこそ、他者のかけがえのなさを知り、他者を尊重する心をもって共に生きることに喜びを見出す力」と定義しております。
本ブログ1月29日にご報告した「学内表彰」の学生たちの活動は、この『生涯就業力』の実践に励んだものと言えます。
本日、ここにご報告するNPO法人あい・ぽーとステーション(代表理事 大日向雅美)のシンポジウム「地域共生社会人材養成機構シンポジウム~"私ごと"としての地域共生社会~」(2024年2月3日)も同じ思いで開催したものです。
本法人は2005年から地域の子育て家庭を応援する「子育て・家族支援者」養成を、2013年からシニア世代男性の地域貢献活動のための「子育て・まちづくり支援プロデューサー」養成を行ってきました。20年近くにわたる地域人材養成事業を通して明らかになったことは、人は性別や年齢、職業等々を問わず、だれもが生涯にわたって人や社会とのつながりを求めていること、そして、支え・支えられてお互い様の心を紡ぎ合うことが、生きる喜びになるということです。この間のつらく苦しいコロナ禍を経て、改めてスタッフや地域の方々と共に、強く実感したことでもありました。
老若男女共同参画で、誰ひとりとして取り残さない・取り残されない「地域共生社会」を築くための仕組みづくりをめざしたキックオフシンポジウムでしたが、話題提供に続けて、内閣府や各省庁、各自治体、企業関係者、地域の方々等とのリレートークを、会場とオンラインのハイブリッド形式で行い、全国からたくさんのご参加をいただくことができました。
4時間に及ぶシンポジウムの中で、数々の貴重なメッセージが交わされましたが、とりわけ私の心に残ったのは、人間はなぜ生き延びることができたのか?についての次の言葉の紹介でした。
コロナ禍や自然災害を前に苦しむ弱さを痛感する日々ですが、そうであればこそ、支えあって生きる強さ、そして、そのためにあたたかい愛の涙を失わない「人としての」美しさを大切に生きていきたいと思います。