サンティアゴ巡礼道を歩く4人の学生からの報告
~キーワードは「充分」「語彙」「弱さ」「伝える」です!~
2020年02月28日
本学の5名の学生たちがサンティアゴ巡礼道を歩いています。
この巡礼道はスペインの世界遺産としても有名なキリスト教の祈りの道です。
学生たちは2月10日~3月25日の期間をかけてこの祈りの道を約800キロ踏破することになります。
第6弾となるサンティアゴ巡礼道シリーズ、今回は4人の学生たちがいま考えていることを記してくれました。
これで充分
2月15日
国際社会学科2年 山本遥
今日までで私の荷物は随分と軽くなり、ザックも一回り小さくなっていた。その理由は巡礼初日のピレネー山脈超えで、自分の持てる範囲を超えた重い荷物で痛い目を見たからだ。
私は日本からかなり多くの食料を持ってきていた。非常食の炊き込みご飯、カロリーメイト、ビスケット、お味噌汁の素、紅茶、コーヒー、等々。来る前に言われていた3日分の食料どころか、軽く5日分の食料を持ち歩いていたのである。そんなザックを背負って登っていたピレネー山脈の途中でバテて、他のメンバーに荷物を分けて持ってもらう事態になってしまったのだ。自分の体力が足りないばかりに、自分が持てる以上の荷物を持ってきたばかりに他のメンバーに迷惑をかけてしまった。「荷物のことは大丈夫だから、がんばれ」と声をかけてくれるメンバーは優しいし、本当に有り難い存在だと思うけれど、やっぱり自分の荷物は自分で背負うべきだった。そのために、自分で運びきれる量の荷物にセーブするべきだったし、自分の体格と体力をもっと考慮するべきだった。
この件の全ての原因は、自分の欲にあったと思う。コーヒーや紅茶なんて別に持っていかなくても毎日どこかで飲めるし、毎朝忙しくてそんな時間はない。食料だって、スペインのスーパーや雑貨店で驚くほど安く買うことができる。正直、食料なんてほんの少し持っていれば何とかなったと言ってしまえるくらいだった。
だから今、私の荷物はスペインに来た当初よりもかなり軽い。いらないものは前の巡礼宿に置いてきたし、必要とするメンバーがいればその人に渡した。今、私のザックにはだいたい3食分の食料と、少し残ったカロリーメイトとお味噌汁の素だけが残っている。
これだけで充分なのだ、これだけで。
気持ちに適した語彙を使う
2月16日
国際社会学科1年 嶋野美晴
私の口ぐせは「めっちゃいい!」だ。この口癖を指摘されることで初めてこの言葉は危険だと気づいた。「めっちゃ」と同義の形容詞は、「とても」「大変」「非常に」など多くある。
「めっちゃ」は便利な言葉だが、その場に適した言葉を使わず「めっちゃ」に依存すると、語彙力が落ちる大きな原因となる。また、共感しにくく、語彙が少ないと判断されてしまう。
「いい」も同様だ。どう「いい」のか、何が「いい」のか、「いい」にも多くの意味が含まれる。「素敵」「素晴らしい」「立派」など多くの語彙を使って表現できるのにも関わらず、一言で済ませてしまう。
このような便利な言葉は現代に多くあるが、可能な限り使用せず、様々な語彙を使って表現していくことが大切だと考える。巡礼中、毎日そのことを意識して語彙を増やし、様々な気持ちに適した言葉を使えるように努力していきたい。
自分の弱さ
2月17日
英語コミュニケーション学科1年 松本千佳
巡礼の旅が始まって1週間になろうとしている。私がここ数日の巡礼の日々を通して感じた事は考えることの大切さだ。
日々を過ごし考える中で、自分自身の生きる力の弱さを実感した。
出発前も、その後も、スペイン語を全く勉強していなくて、桃井先生やスペイン語を話せるメンバーに頼るばかり。
自分の食べたい物を注文できなかったり、トイレの場所がわからなかったり。生活していく上でスペイン語を話せないのが非常に不便であることや、自分の無力さを痛感した。
自炊するときも、知識や今ある物・環境でいかに過ごしやすくするか、工夫し考える続けることの大切さを学ぶことができた。
メンバーといるときは、なかなか素の自分を出すことや、意見を言うことに躊躇いがあった。
だか、何か疑問があった時や悩んでいる時、メンバーに話すことで悩みが軽くなったり、自分から話すことで相手をより深く知ったりできた。
この日は初めて先頭で歩いた。
何度も先頭で歩いてみたい気持ちはあったが、自分の体力では先頭を歩けないと思っていたり、先頭で歩くことに恐怖を感じていたりした。
メンバーの美晴がその日の朝先頭で歩いているのをみて、すごくその背中がかっこよくて私も先頭で歩いてみたいという気持ちが強くなっていた。
優真に誘われたのが、先頭を歩くきっかけだった。歩いてみて、自分の目の前に映る景色が今まで経験したことのないもので、歩いていてどんどん先に進みたいと思えてすごく気持ちよかった。
この道が正しいのか、歩くペースは良いか不安になって何度も後ろを振り返った。
その時、後ろにいるメンバーの微笑みがとても支えになったし、自分はサンティアゴ巡礼道プロジェクトメンバーの一員であること、今までどこか受動的だったことを感じた。
毎日行われるアフターミーティングで、自分の発言について指摘された時、まだ自分が本気で巡礼に、自分自身に向き合い切れてないことに気づかされた。
自分が朝のミーティングでコール(朝、出発する時のかけ声)を任された時も、自分がチームの一員であることを実感し、同時にもっと、メンバーにも自分にも、今後の巡礼生活で真剣に向き合っていきたいと強く思った。
桃井先生から、巡礼することができるのは、自分たちが金銭的に恵まれているからだという話をミーティングで聞いた時、大学で学んでいた女性の貧困問題について考えた。
もし自分の家庭が貧困状況にあったなら、このプロジェクトに参加できないし、大学にも行けなかったかもしれない。
そんな風に辿っていくと自分がいかに恵まれていて、甘い考えを持っていたのかにも気づかされた。
自分がスペインにいること、この巡礼に参加できていること、歩けること、支えられていることに日々感謝して、本気で自分と向き合って、日本に帰った時に悩んでいること、興味のあることに積極的に参加できるようになりたいと思う。
伝える
2月18日
社会園芸学科3年 桝居奏
今日向かうまちはロス・アルコス
約23kmの道のり。晴天。
歩き始めて8日目。
だんだんチーム内での歩きに慣れてきた。
慣れてくるとより自分について考える時間ができてくる。
巡礼道を歩いているとき、約6時間。
一人で歩いて思考を巡らせたり、誰かと一緒に意見交換したり、とても有意義な時間だ。
本当は足が棒のようで、膝や足の爪が痛い。
痛みを抱えつつ、でも前に進むように
たまに堂々巡りしながらも考えて考えて、パッと気づいたように広大な景色をみて、なんて得難い時間なんだろう、と
また感慨深くなる。
考えるのはやっぱり帰ってからで、これまでは自分が自分のためにどうするかだったけれど、今回は帰ってから皆にできることは何かを考えた。
一緒に歩いている後藤さんの、
「自分のことどれくらいわかってる?」
っていう質問がきっかけだった。
私は自分のこと50%わかってると思ってる。
わかってる50%はこれまで得た私という存在。
もう半分はまだわかってない、もしくは無意識に働いている偏見。
それを認識すれば"わかる"ことになるのだけど、その分またわからないことが増えるはずだ。
100%自分をわかってるという人もいたし、同じ50%の人もいた。でも私とは違う考えを持っていた。
みんながどう考えているのか
知るのが面白いし楽しい。
この感覚は日本ではまず味わえない。
でも日本にもあってもいいはずだ。
まずは恵泉女学園大学でなにができるか。
私の周りからなにを伝えていこうか。
いまはFacebookやホームページで
文章にしているけど、ボイスメッセージという案が出た。
なるほどやってみようと思って、山本さんと一緒に歩きながら3分の動画を撮った。
周りの景色を映しつつ、自分たちの状態や、何が楽しみで何が苦しいのかということ、それでも歩いてるよ、という近況報告を動画に込めて。
まずは出発してから連絡を取っていない家族に送ってみた。
「笑顔で歩いている姿を見られて、嬉しくなったよ。ありがとう。マメにも負けず、かぜにも負けず!」とのこと。
巡礼が苦しいことだけでなく、楽しいことが伝わったようだ。
次は自分の考えていることを動画にしてみよう。
幸い明日は休息日。
挑戦するにはうってつけだろう。
伝える。人に言う
様々な手段を考えながら。
以下は、サンティアゴ巡礼道を歩く学生たちの4日目~12日目までの記録です。
2月13日(木)
サンチャゴ巡礼~4日目~
今日の選句de聖句
【お前はまた、大地の広がりを、隅々まで調べたことがあるか。そのすべてを知っているなら言ってみよ。】ヨブ記38:18
- 7:00 集合 ミーティング
- 7:10 アルベルゲ 出発
- 8:30 休憩 in Keler
- 10:12 Alto de Mezquiriz
- 10:40 休憩 in Venta peio
- 11:30 昼休憩 in Agence postale communale
- 12:40 休憩 in Corazon purple
- 14:00 休憩 in Linzoain
- 15:10 休憩 in Pasos de Roldan
- 16:18 休憩 in Venta del Puerto
- 18:05 Albergue da Peregrinos(Albergue)
【距離数:25.51km/歩数:38476】
2月14日(金)
サンチャゴ巡礼~5日目~
【あなたに向かって両手を広げ、渇いた大地のようなわたしの魂を、あなたに向けます。】詩編143:6
- 7:00 集合、ミーティング
- 7:15 出発
- 8:50 休憩 in dendaberri
- 9:45 休憩 in Espinal
- 11時 休憩 in Alto Mezquiriz
- 11:25 昼休憩 in Viskarreta
- 14:25 休憩 in Alto Erro
- 16:00 Albergue Rio Arga Ibata (Albergue)
【距離数:21.9/歩数:35077】
2月15日(土)
サンチャゴ巡礼~6日目~
【もしわたしの名をもって呼ばれているわたしの民が、ひざまずいて祈り、わたしの顔を求め、悪の道を捨てて立ち帰るなら、わたしは天から耳を傾け、罪を赦し、彼らの大地をいやす。】歴代誌下7:14
- 8:00 集合、ミーティング
- 8:15 アルベルゲ出発
- 9:30 休憩 in Akerreta
- 10:40 休憩 in Zuriain
- 11:21 昼休憩 in Irtoz
- 12:53 休憩 in Pasarela
- 14:50 Albergue Jesus Y maria
【距離数20.9km/歩数:36122】
2月16日(日)
サンチャゴ巡礼~7日目~
【弱い者を塵の中から立ち上がらせ、貧しい者を芥の中から高く上げ、高貴な者と共に座に着かせ、栄光の座を嗣業としてお与えになる。大地のもろもろの柱は主のもの、主は世界をそれらの上に据えられた。】サムエル記上2:8
- 8:10 アルベルゲ出発
- 8:20 ミーティング
- 9:30 休憩 in Cizur Menor
- 11:00 休憩 in Zariquiegui
- 11:50 昼休憩 in Alto del Perdon
- 13:05 休憩 in Fuente Ei Obispo
- 14:50 Casa Baztan (Albergue)
【距離数:20.4km/歩数:28565】
2月17日(月)
サンチャゴ巡礼~8日目~
今日の選句de聖句
【主は御力をもって大地を造り、知恵をもって世界を固く据え、知をもって天を広げられた方。】エレミヤ書10:12
- 8:10 アルベルゲ出発
- 8:20 ミーティング
- 9:30 休憩 in Pante La Reina
- 10:25 休憩 in Menus
- 11:20 昼休憩 in Manet
- 13:05 Lorca
- 14:30 Villatuerta
- 16:30 Albergue de Villatuerta(La Casa Mágica)
【距離数:23.4km/歩数:39882】
2月18日(火)
サンチャゴ巡礼~9日目~
今日の選句de聖句
【わたしが大地を据えたとき、お前はどこにいたのか。知っていたというなら、理解していることを言ってみよ。】ヨブ記38:4
- 7:00 集合、ミーティング
- 7:15 Albergue de Villatuerta(La Casa Mágica)出発
- 8:40 休憩 in Matucana
- 10:30 休憩 in Azqueta
- 12:00 昼休憩 in Auza
- 13:40 Kapanaldea
- 15:25 Albergue La Fuent - Casa Austria 到着
【距離数:23.3km/歩数:38750】
2月19日(水)
サンチャゴ巡礼~10日目~
今日の選句de聖句
【「大地は粘土に型を押していくように姿を変え、すべては装われて現れる。】ヨブ記38:14
- 8:45 Cafe Abascal(休憩)
- 10:15 Albergue La Fuent - Casa Austria
- 10:20 ミーティング
- 14:40 昼休憩
- 20:20 アフターミーティング
(休養日なので移動なし)
2月20日(木)
サンチャゴ巡礼~11日目~
今日の選句de聖句
【わたしは、まだ人のいなかった大地に、無人であった荒れ野に雨を降らせ、乾ききったところを潤し、青草の芽が萌え出るようにした。】ヨブ記38:26
- 6:45 集合、ミーティング
- 7:05 アルベルゲ出発
- 8:50 休憩 in Sansol
- 9:15 休憩 in San Andres
- 10:12 休憩 in Valdecornava
- 11:04 休憩 in Valcardera
- 12:07 昼休憩 in Viana
- 13:07 休憩 in Quilinta
- 15:20 Peregrinos Logrono(Alberrgue)
【距離数:30.19km/歩数:40526】
2月21日(金)
サンチャゴ巡礼~12日目~
今日の選句de聖句
【大地は作物を実らせました。神、わたしたちの神が、わたしたちを祝福してくださいますように。】 詩編67:6
- 6:30 集合、ミーティング
- 6:45 アルベルゲ出発
- 8:07 休憩 in Pantano de La Grajera
- 8:55 休憩 in La Grajera
- 10:12 休憩 in Bacateria
- 12:40 昼休憩 in Virgen Blanca
- 13:35 休憩 in Los Pazos
- 14:45 休憩 in Los Cuernos
- 15:50 Municipal de Najera
【距離数:29.3km/歩数:46928】
サンティアゴ巡礼道プログラムについては学長の部屋でも紹介しております
東京新聞に今回のサンティアゴ巡礼道プログラムの記事が掲載されました。
引率者の桃井和馬先生による過去の巡礼道体験記が昨年12月にNHKで放映されました。
こころの時代~宗教・人生~「戦場から祈りへ」
本学は海外プログラムが盛んで、「国際性」の分野で3年連続 首都圏女子大1位の評価をいただいております。
本学はキリスト教主義の大学として礼拝やチャペルコンサートなど多彩な活動を行っています。