鶏を絞め、生命をいただいた
~サンティアゴ巡礼道プログラム参加学生からの報告~

2020年03月03日

現在、本学の5人の学生がスペインのサンティアゴ巡礼道を歩いています。
学生たちは、2月10日~3月25日の期間をかけて、このキリスト教の祈りの道を約800キロ踏破することになります。
第7弾となるサンティアゴ巡礼シリーズ、今回は後藤茉里さんと山本遥さんが報告を寄せてくれました。
掲載写真はそれぞれ執筆者である学生が撮影したものです。

与えられてきたもの

2月19日
英語コミュニケーション学科2年 後藤茉里

今日の昼ご飯は、トマトチキンスープとリゾット。
使ったニワトリは、私たち自身でしめて、調理した。

私にとってその過程は、頭ではわかっていても心が追いつかないものだった。

私はどちらかというと、物事を心で見て考えるより、頭で見て考えていくタイプだ。
だからこそ、「花は綺麗」や「命は尊い」など頭ではわかっている当たり前のことを、本当に感じることが出来たら幸せだと思い、そんな瞬間をどこかずっと求めていた。

首をナイフで切り込まれ、息を引き取り、毛を剥いだニワトリは生き物と食べ物の中間。しらない物のようだった。

ニワトリの命は、私たちの命のためにいただいた。

今まで私は、いくつもの命を、自然からいただいてきたのだろう。
当たり前のことに初めて気付いた時、頭では、美味しくありがたくニワトリを頂くべきと分かっていたのに、私は食べることが出来なかった。

与えられた分だけ与え返すこと。

それは、生き物の命や、人からの知恵や優しさなどの全てに対する、自分が贈り返す責任。

そんなことを実感した日だった。

生命をいただいて生きる、ということ

2月20日
国際社会学科2年 山本遥

昨日、私達は4羽の鶏を自分たちの手で絞めて解体・調理し、美味しくいただく、という一連の流れを体験した。

私は、1羽の頸に刃を入れ、解体するまでの工程を実際にやってみた。
正直、自分の手の中で命が消えるという体験は気持ちのいいものではなかったし、辛い思いをしたメンバーもいたと思うけれど、私にとっては必要で貴重な経験だったとも思う。

私はもともと、普段目にする「お肉」はすでに加工されたものばかりで、人間が1番知りたくない部分を見ないようにしていることに対して、ずっと疑問を抱いてきた。
そんなのは責任逃れだ、とも考えていたし、「生命」をいただいているんだという気持ちは持っているつもりだった。

しかし、実際はそれを頭で理解して知っているつもりになっているだけだった。本当はこれっぽっちもわかっちゃいなかったのだ。

私に頸を切られた鶏が最後の抵抗をしようともがいて、鶏のからだを抑え込んでいたメンバーの手に、腕に、その筋肉の力強い反動が伝わっているのが隣にいてよく分かった。
それを思い出すだけでも、なんとも言えない気持ちになる。

そして、自分の手の中で少しずつ動かなくなり、やがて静かに目を閉じた鶏は、初めよりも随分と重いような気がした。もうその小さなからだが動くことはないし、血の気も無くぐったりとしているけれど、まだ先程までの生命のぬくもりが残っている。
しかし、その命を私が奪ったのだと思うと、何も言えなかった。
何も言葉が浮かばなかった。
可哀想だと言うことも、そう言って泣くこともできたかもしれないけれど、彼らの命を奪った私にその資格はないのだと思った。

解体して内臓を取り出したとき、最後に出てきた小さな心臓がさっきまで脈打ち、このからだを動かしていたんだと思うと胸が詰まった。

まな板の上で急に「鶏」から「お肉」になってしまった。さっきまで生きていたなんて、解体されたところだけ見た人が信じるだろうか。 

きっと信じないだろう。
だってそこにあるのはもうすでに見慣れた「お肉」だから。こんなにも簡単に「お肉」になってしまうなんて思っていなかった。
本当に、実際にやってみないと分からないと思う。作業はいたってシンプルだったが、心が受けた衝撃はそんなものじゃなかった。

実際に鶏を絞めてみて、私の「生命」への考えが変わることはなく、むしろ強くなった。

ただ、今日自分の手に残ったすべての感覚を、あの生命の最後の抵抗を忘れないでいたい。私たちは「生命を頂いて生きている」のではなく、「生命を頂くことでしか生きられない」のだから。

以下は、2月22日~27日までのプログラムの記録です。

2月22日(土)

『ブルゴスのカーニバルのため休養日』
サンチャゴ巡礼~13日目~

今日の選句de聖句
【かつてあなたは大地の基を据え、御手をもって天を造られました。】詩編102:25

  • 8:00 集合、ミーティング
  • 8:15 出発
  • 9:30 バス出発
  • 11:00 Burgos 到着
  • 14:00 Casa del Cubo (Albergue)
  • 17:30 集合、アフターミーティング

2月25日(火)

サンチャゴ巡礼~16日目~

今日の選句de聖句
【一代過ぎればまた一代が起こり、永遠に耐えるのは大地。】コヘレトの言葉1:4

  • 6:45 集合、ミーティング
  • 7:00 アルベルゲ出発
  • 9:30 休憩 in Ei Meson
  • 11:00 休憩 Los Tusillos
  • 14:10 Albergue Puente Redondo(Albergue)
    • 【距離数:29.3km/歩数:42129/地名:Itero de la Vega】

2月26日(水)

サンチャゴ巡礼~17日目~

今日の選句de聖句
【塵は元の大地に帰り、霊は与え主である神に帰る。】コヘレトの言葉12:7

  • 7:00 アルベルゲ出発
  • 8:30 休憩 in Puzzle's
  • 10:40 休憩 in Calle Remon y Cajal
  • 12:30 昼休憩 in Villalcazar de Sirga
  • 14:50 Albergue Espiritu Santo(Albergue)
    • 【距離数:27.6km/歩数:37637/地名:Carrion de los Condes】

2月27日(木)

サンチャゴ巡礼~18日目~

今日の選句de聖句
【論じ合おうではないか、と主は言われる。たとえ、お前たちの罪が緋のようでも、雪のように白くなることができる。たとえ、紅のようであっても、羊の毛のようになることができる。お前たちが進んで従うなら、大地の実りを食べることができる。かたくなに背くなら、剣の餌食になる。主の口がこう宣言される。】イザヤ書1:18-20

  • 8:00 集合、ミーティング
  • 8:15 アルベルゲ出発
  • 9:45 休憩 in El Cascajon
  • 11:05 休憩 in El Abol
  • 12:15 Bar El Camino (Albergue)
    • 【距離数:20.2km/歩数:28233/地名:El Barco】

サンティアゴ巡礼道プログラムについては学長の部屋でも紹介しております

東京新聞に今回のサンティアゴ巡礼道プログラムの記事が掲載されました。

引率者の桃井和馬先生による過去の巡礼道体験記が昨年12月にNHKで放映されました。
こころの時代~宗教・人生~「戦場から祈りへ」

本学は海外プログラムが盛んで、「国際性」の分野で3年連続 首都圏女子大1位の評価をいただいております。

本学はキリスト教主義の大学として礼拝やチャペルコンサートなど多彩な活動を行っています。

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